サスティナビリティ(持続可能性)はあらゆる産業で避けて通れない問題となっている。ウイスキー業界も麦や水など自然の恩恵を受けており、環境保全に向き合うことが求められている▼スコットランドにラフロイグなど複数の蒸留所を保有するサントリーは、麦芽を乾燥させるために使うピート(泥炭)の保全活動に乗り出す。スモーキーな風味づけに欠かせない泥炭は湿原に堆積しているが、商業採掘が進み湿原の減少が続いている▼2030年までに1300ヘクタールの泥炭地の保全に取り組む。乾燥化した泥炭地の水位を上げて湿潤な状態に戻し泥炭の堆積を促すようにする。泥炭は炭素を蓄える機能があるため、CO2排出抑制にも寄与するそうだ▼環境負荷を軽減したウイスキーを「開発」したのは米サンフランシスコのスタートアップ、エンドレス・ウェスト。ウイスキーを分子レベルで分析、同じ成分を天然物から抽出して混合するもので、わずか1日で生産できるという。熟成工程がないため樽用の木材が不要で、生産に必要な水なども大幅に削減できる▼熟成させないウイスキーの味は想像がつかないが、持続可能性という付加価値がつく。時間をかけ手間をかける伝統的なウイスキーは値が張って手を出しにくくなっているだけに、培養肉のように支持されるようになるかも。(21・12・17)

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