録画した映画を自宅で見る機会が増えたきょうこの頃、ある西部劇の何気ない台詞にハッとした。なぜ神様に何度も感謝するの?何もしてもらってないのに。そう聞く子供に大人はこう答えた。生きる時間と死ぬ場所を与えてくれたからさ▼小社もいま、できる限り社員が出社せず、自宅で勤務する体制としている。テレワークでオフィスと同じように仕事ができるのか、集中力が保てるのかといえば、そんなはずはない。そう懐疑的に考えていた。ところが時間と場所について話すその台詞を聞いて、考え方、ものの見方を間違えていたかも知れないと思い直した▼時間とは何か。空間とは何か。物理の概念として、あるいは本質としての時間や空間については、いくら考えても結局はよく分からない。しかし、生まれてから死ぬまで、自分が生きている間に過ぎていく時が時間であり、自分が人生を刻むさまざまな場所が空間であると考えれば腑に落ちる▼人は誰もが生まれ、生きて、そして死ぬ。そこで与えられた時間と空間にはかけがえのない価値がある。その価値に気付き、感謝する気持ちがあれば働く場所は関係ない。その価値に気付けなければ、オフィスでも能率が上がらないはずだ▼とはいえ、ゴルフや飲み会はリモートでは寂しい。そういう思いも覆す映画はあるだろうか。(20・4・28)

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