昨年から続いている原材料価格上昇が、プラスチック加工業界の経営に影を落としている。全日本プラスチック製品工業連合会の2022年4~6月期の会員景況感調査報告によると、当面の経営上の問題点で「売り上げ不振」と回答した企業は全体の43・5%と、かなり高い数値となった。原材料高を訴えている企業も84・1%と、さらに高い割合だった。これを製品分類ごとにみると日用品・雑貨類96・0%、包装容器・キャップ90・5%、電気・電子・通信部品88・6%と続いた。コロナ禍、北米の滞船問題の解決にめどが立たず、終わりの見えないウクライナ情勢と、それにともなうエネルギー・原材料価格上昇が、大きくのしかかっている。

 同連合会会員から「今年に入って少しずつ製品単価の見直しができつつあるが、材料単価の上昇に追いつかず、その後の注文につながっていない」「材料費の上昇を製品単価に反映するまでにタイムラグがあり、今は厳しい状況にある」「原油高騰による燃料や原材料の値上げ、電気代、食料品価格上昇とすべてが負の連鎖」「自動車部品に7割以上依存している

ので、深刻なダメージがある」といった声が挙がっている。
 プラ加工は電力も使うため電気代上昇の影響も大きい。同連合会によると「100円ショップ」で販売されているプラ加工製品のメーカーは、とくに原材料や電力などのコストアップが大きな痛手だという。「100円」が上限のためサイズを小さくしたり、3個セットを2個に減らしたりして凌いでいる。「200円」「300円」という単価のショップも現れているが、値上げによって顧客が離れるのが心配のようだ。

 食料品を中心に今秋にかけて、さらなる値上げが見込まれている。インフレに向かっていることは間違いないだろう。悪性インフレを防ぐためにも、ここは賃上げが必須ではないか。中央最低賃金審議会の小委員会は8月1日、最低賃金(時給)を全国加重平均で31円(3・3%)引き上げ、961円とする目安をまとめた。過去最大の引き上げ額となる。

 だが賃金は、もう何十年も上がっていない。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2020」によると、日本の製造業の労働生産性は1990年代から2000年までトップクラスだったが、18年に16位に後退した。日本企業の生産性が向上させるためには、研究開発やイノベーションを通じて新しい製品・サービス、ビジネスモデルを創造することが必須要件だろう。そのためにも企業の内部留保を活用してほしい。

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