2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を宣言した日本。企業にとっては追い風であっても向かい風であっても脱炭素化への対応は無視できないようになった。そのために必要な資金をどのように調達するかが大きな課題の一つになっている▼環境問題を解決する事業(グリーンプロジェクト)に充当する資金を調達する手段として世界的に拡大しているのがグリーンボンド(環境債)。環境省のグリーンボンド発行促進プラットフォームの資料によると、日本では20年に発行総額が1兆円を突破した。コロナ禍でありながらも前年に比べて20%以上増えた▼14年に日本政策投資銀行が発行したのが国内第1号。化学メーカーでは旭化成が昨年、水力発電所の改修を目的として100億円分を発行するなどの実績がある。発行する業種の裾野が徐々に広がっているようだ▼発行する企業は環境問題を改善する姿勢を対外的に示し、それによって社会的な支持が期待できる。ESG(環境・社会・企業統治)投資に前向きな投資家の資金を呼び込みやすくなる利点もある▼脱炭素化に向けた動きが加速するなか、市場や投資家は企業の取り組みを注視し選別するようになってきた。資金調達のあり方もその流れに逆らえない時代になった。  (21・2・19)

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