旅人がある町を歩いていると1人の男が険しい顔でレンガを積んでいる。旅人が何をしているのか聞くと、男は面倒くさそうに「親方の命令でレンガを積んでいるのさ」と答える。また歩いていくと、別の男がレンガを積んでおり、尋ねると「食べていくために働いている」と答える。さらに歩くと、また別の男がレンガを積んでおり、イキイキとした顔で「皆がお祈りする大聖堂を建てている」と答える▼イソップ寓話の「3人のレンガ職人」は、同じ仕事でも人によって志やモチベーションが各様であることを示している。1人目は言われたことをやっているだけ、2人目も仕方なく働いているが、3人目は皆の役に立つ大聖堂の建立という壮大な目的意識がある。3人目が造るレンガの壁の品質は間違いなく優れているだろうし、コツを後継に伝承することも厭わないだろう▼では、1人目や2人目が目的意識を持ち、それを高めることはできないのか。そんなことはないはずだ。親方や依頼主が夢や目標、方向性をビジョンとして明確に示し、職人自らなぜ働くのか、ビジョン達成に貢献するため自分は何ができるのか、考えることができれば▼化学は社会や地球の役に立つ。そうしたビジョンのもと、次代を担う多くの若者が化学に飛び込み、挑戦することを願う。(21・3・15)

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