関西で新たな研究開発施設を設ける動きが活発化している。開発体制の強化とともに業務効率化を図り、将来を支える新事業の創出・育成につなげる狙いだ。またデジタル技術を使って、製品やサービス、新しいビジネスモデルを作り、新型コロナウイルスを克服しようとしている。

 ステラケミファは、次世代電池や次世代高速通信、バイオテクノロジーなど先端分野での新技術・新製品開発を目指し、新研究開発棟を建設する。これまで研究開発業務を同社三宝工場(堺市)と泉工場(大阪府泉大津市)の2拠点で行ってきたが、三宝工場の敷地に新棟を建設し研究開発拠点を集約する。これにより技術や情報の伝達・共有、研究機器や人材リソースの活用など業務効率向上を狙う。生産技術開発を行うための機能も充実させ、研究開発から製品化にいたる工程をスピードアップし、新製品の早期事業化を図る。

 新棟は2022年度下期の完成を予定。最先端の半導体用高機能・超高純度薬液や、全固体電池などの次世代電池材料に関する製品開発を加速する。同時に新用途の高機能フッ化物や、バイオ分野における材料開発といった新事業の創出を目指す。ドライルームや環境試験室に加えて、清浄な環境で実験・試作が行えるクリーンルームなど最新の研究開発設備を設置する。また研究開発部門を開けたオフィス空間に集約し、研究者同士のコミュニケーションを容易にすることでイノベーションを促進する。

 住友ベークライトは尼崎工場(兵庫県尼崎市)内のフィルム・シート研究所に「Packaging Innovation Center」(PIC)を開設した。新型コロナ感染拡大により顧客の来場、Face to Faceの面談が困難な状況下、同社は顧客とのコミュニケーションを進化させるため、ハイブリッド活動(Face to Faceとリモートの両立)を進めているが、同活動のさらなる推進の旗艦施設としてPICを運用する。

 PICは、来場が難しい顧客へ対応するためのオンライン配信用スタジオを併設。来場に近いかたちで評価設備などが体感できるライブ配信可能な体制を整えた。開発検討の初期から顧客のパッケージ検討に協力し、アイデア・技術の融合を目指していく。

 各社とも先行き不透明な状況のなか、前向きな姿勢を崩さず新たな製品やサービスを創出しながら、将来の安定成長への道を切り拓こうとしている。オンラインなど最新技術を積極的に活用しつつ、新しい研究開発体制を整えていくかが今後の焦点になる。

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