菅義偉首相は、先の所信表明演説で「温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする」との目標を宣言した。欧州に比べ遅きに失した感は否めないが、この明確な意思表示は、再生可能エネルギーの普及拡大の追い風となることは間違いないだろう。

 その再エネの中で最も普及が進むのが太陽電池(PV)だ。現在では5年前に比べPVパネル1枚当たりの出力が倍増するなど、PVと蓄電池の組み合わせだけで家庭での消費電力をカバーできるほどになった。しかしPVのさらなる普及には適用市場の拡大が不可欠。屋根向けの導入拡大と併せ、多方面への“展開力”が求められる。

 展開力強化に関して、PVの市場調査やコンサルタントを請け負う資源総合システム(東京都中央区)は「システムやサービスの差別化・複合化・付加価値化のためのビジネスモデルづくりがカギ」と強調する。PVを組み込んだZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)をはじめ、PV住宅などと電気自動車(EV)を連動させたV2H(ビークル・トゥ・ホーム)やスマート工場、スマートシティにいたる、次世代のインフラを見据えることが重要と語る。

 また同社では、産業間連携による展開力の強化を推奨する。例えば農業や自動車、建築、産業機器、水素製造、鉄道などに向け、PV産業からの積極的な働きかけを提唱する。さらに投資対象や電力取引モデルとしての太陽光発電にも着目。金融や情報通信などの分野にもPVの活用を呼び掛けている。

 展開力の強化では「RE100」向けの提案が一つの試金石になるのではないだろうか。RE100は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアティブ。日本からは現状、リコーやパナソニック、フジクラ、旭化成ホームズなど42社が参加しているが、首相の所信表明演説を受け、さらに増えることが予想されている。

 さまざまな業種が参加するRE100にとって、利用者側の要求にいかに対応できるかでシステム採用の合否が決まる。この柔軟な展開力こそが日本のPV産業が世界に打って出るビジネスモデルとなる。PVは、いまや単なる発電装置ではない。AI(人工知能)やビッグデータ、ドローンなどとの組み合わせで、企業価値を引き出すソリューションになり得る。

 資源総合システムは「社会に溶け込む太陽光発電システム」の重要性を説く。あらゆる領域に適用できれば、温室効果ガス排出量の実質ゼロも、きっと夢ではなくなる。

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