7月26日、14年前に秋葉原の歩行者天国で7人が殺され、10人が重軽傷を負った秋葉原無差別殺傷事件の死刑囚に刑が執行された。6年前、知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で元施設職員が入所者19人を刺殺し、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせた相模原障害者施設殺傷事件が起きた日だった▼死刑執行と相模原の事件との関連を勘ぐられるのは想定できた。避けることもできたはず。あえてこの日を選び、無差別殺人は絶対に許さないとする姿勢を示したのか。それは極刑に処すことで十分ではなかったか。無頓着に決めたのなら死刑の重みを知れ▼秋葉原事件の元死刑囚は、事件を起こす前月に勤務先の派遣契約が終了するといわれ、「やっぱり私は要らない人です」とネット上に投稿していたと伝えられている。1審判決は事件の動機として「非常に強い孤独感を感じていたことも背景にある」と指摘していた▼相模原の事件では、意思疎通のとれない障害者を「心失者」と呼び、それが日本の財政を圧迫し、不幸の根源であるとする動機が人々の心を揺さぶった。「“不要な者”は切り捨てられて当然」とする風潮と重なったからだ。見せしめのような秋葉原事件の死刑執行にも同じ空気が漂う。元死刑囚も、それを内面化していたから孤独に追い込まれた。(22・7・28)

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