★西村康稔経産大臣 日本の成長力を取り戻す

 西村康稔経済産業大臣は10日夜に就任会見に臨み、「日本が中長期的に成長できるよう、国民の所得が向上するよう、イノベーション創出や構造改革に取り組んでいく」と抱負を述べた。

 西村大臣は経産省として課題が山積するなか、最優先で取り組むべき事項として①安価で安定的なエネルギー供給の確保②日本経済の成長力の強化―の2つを挙げた。とくに成長力強化については、第2次安倍政権で、甘利明経済再生担当相のもと副大臣として経済政策「アベノミクス」の立案、実行に携わってきたことに言及。「アベノミクスでいうところの3本目の矢である成長戦略の部分」に注力していくとした。

 脱炭素を経済成長につなげるGX(グリーントランスフォーメーション)では、実行のための施策を具体化すると言明。官民で150兆円とされる脱炭素関連投資の呼び水となる「GX経済移行債」の償還財源について「しっかりと議論していきたい」と述べた。

 日米経済政策協議委員会(経済版「2プラス2」)で合意した、次世代半導体の共同研究開発にも触れ、「経済安全保障の観点からも、しっかりと進めていく」とした。

 西村大臣は1985年に通産省(現経産省)に入省、99年に政治を志して退官した。入省時、退官時に抱いた「日本の将来のために働きたいという初心を思い起こし、日本の発展のために全力を尽くす」と強調した。西村大臣の義父である吹田愰代議士は、銃弾に倒れた安倍晋三氏の祖父である岸信介首相を長く支えてきた人物。「岸首相は経産省の前身である商工省に入省し、商工大臣も務めた。今回の経産大臣就任は、そういったご縁のなかで安倍総理が導いてくれたものだと思っている。安倍総理の遺志を引き継いでいく」と述べた。

★髙市早苗経済安保大臣 セキュリティ・クリアランス検討

 髙市早苗科学技術政策担当/経済安全保障大臣は10日、就任会意見を行った。「国の究極の使命は国民の生命と財産とともに領土、領海、領空、資源や国家の主権と名誉を守り抜くことだと思う。これを基本に政策を組み立てていくことが国益につながる」と強調。経済安全保障は「喫緊の課題」であり、経済安全保障推進法を核とした実効性のある経済安全保障の確保に向け「スピード感を持って取り組んでいく」と語った。また、科学技術イノベーションについては「各国の覇権争いや直面するカーボンニュートラル実現をはじめとする地球規模の課題」を踏まえ、「これまでの発想にとらわれない大胆な政策の検討を進める」とした。

 経済安全保障推進法に規定された4分野の制度のうち、先行する「重要物資の安定的な供給確保」(サプライチェーン強靱化)における特定物資の指定、科学技術振興とも連動する「先端的な重要技術の開発支援」の研究開発課題の公募(第1次)を「予定通り年内にも」実施する。残る「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保」「特許出願の非公開」についても「しっかり準備を進める」と述べた。

 また、情報保全の視点から機密や機微な情報に触れる者に適格性を確認する「セキュリティクリアランスの検討」にも着手する考えを示したほか、国際的なサプライチェーンに継続的に参画するための「各国の法制度の改正」を常に把握すること、国益を損なう技術流出を防ぐために規模の大小を問わず「あらゆる事業者の信頼への投資」が重要とした。このほか、半導体や「高い技術を持つ医薬品」をはじめとする先端技術の研究開発が「日本で展開できる環境を後押しする」と明言した。

★加藤勝信厚生労働大臣 抗原検査キットをOTCへ

 加藤勝信厚生労働大臣は12日の就任会見で、新型コロナウイルスを対象とした医療用抗原検査キットの一般用医薬品(OTC)化に向け、来週にも審議会で議論に着手することを明らかにした。専門家らで構成する新型コロナウイルス感染症に対する助言組織がOTC化を提言していることなどを踏まえ、「具体的な議論を行っていただきたい」と期待を寄せた。

 17日に開く薬事・食品衛生審議会(薬食審)医療機器・体外診断薬部会で検討に入る。加藤厚労相は薬局での販売を解禁するなどしてきたことを強調。インターネットでの販売を含め「容易に入手できるようにしてほしいとの多くの声を受けている」とし、同省としてもさらなる取り組みを進める考えを示した。そのうえで、医療機関に行き渡ることを前提として、抗原検査キットを「必要とする国民が入手しやすくなるよう鋭意検討を進めていきたい」と力を込めた。

 一方、新型コロナワクチンの接種をめぐっては、「なるべく早くオミクロン株対応ワクチンに切り替える」とし、製薬企業と調整中とした。「できるだけ早い段階で接種開始できるようにする」と続け、調達状況などを自治体などに「丁寧に説明していく」と語った。

 「国民の生活と大変密着している仕事」とする厚労相への登板は今回で3回目。だが、これまでとは「かなり異なっている」との認識で、「初心に立ち戻り、真摯に一つひとつやっていきたい」との姿勢を示した。

★西村明宏環境大臣 G7広島サミット成功へ

 岸田内閣の環境大臣に起用され初入閣した西村明宏氏は10日に就任会見を開き、広島で来春開催される先進7カ国(G7)サミットへの意気込みを見せた。「自分の長所は利害の調整。各省庁と調整し、G7を成功に導きたい」などと発言。選挙区は仙台市を含む宮城3区だが、原発については「安全性を最優先し、原子力規制委員会をサポートするのが自分の仕事」と述べるにとどめた。

 「首相から福島復興、地域脱炭素、海洋プラ問題に加え一連の国際会議への対応を円滑にせよとの指示を受けている。2050年カーボンニュートラル(CN)に向けて環境省の役割は大きくなる。とくに30年までは勝負の10年だ」と語った。とくに重視したい政策を問われると「国際的な潮流であるCNには政府一丸となって取り組む。CNをとりまとめるのが環境省」と答えた。

 過去に第2次安倍内閣の国土交通副大臣兼復興副大臣、第4次安倍内閣の内閣官房副長官などを務めてきた。東北復興に関わった経験はあるが、脱炭素問題の手腕は未知数。会見での発言も決まり文句に終始した。

 最近は自民党の総合エネルギー戦略調査会(額賀福志郎会長)が5月に発表した「クリーンエネルギー戦略の策定に向けた中間提言」にも名を連ねた。今後10年で20兆円の公的支出、再エネの最大限導入、原発の再稼働などが盛り込まれている。

★永岡桂子文部科学大臣 基礎研究力の強化が急務

 永岡桂子文部科学大臣は10日、就任会見を行った。2016年9月に衆議院文部科学委員長に就き、第4次安倍改造内閣(18年10月)では文部科学副大臣として科学技術と文化政策を担当。岸田文雄首相からはこの経験を生かした教育科学政策の推進を支持された。「文科省が担当する分野はこれからの未来を切り拓く重要な行政分野」であり、「母親の視点で、それぞれの分野の課題に向き合っていきたい」と抱負を語った。また、来年4月に新設する「こども家庭庁」については「教育は文科省が責任を持ってその充実を図っており、教育の一貫性、継続性の観点から同庁と連携して政策を進めていく」と述べた。

 日本の科学技術については「基礎研究力が世界に比べ相対的に低下している」とし、「この状況に歯止めをかけ、研究力を強化していくことが急務である」と強調。この要因として「若手研究者をはじめとする研究者を取り巻く研究環境の悪化、博士課程学生の処遇などであり、諸外国に比べ研究開発費も十分でない」ことを挙げた。

 この打開策の一環として運用益を活用して、世界最高水準の研究大学の実現と博士学生の支援強化を目指す10兆円規模の「大学ファンド」を創設。地域の中核や特色ある大学の抜本的な強化に向けた地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージを策定した。「研究力強化は重要であり、引き続き必要となる施策の検討」も視野に入れるとした。

★野村哲郎農水大臣 食料安保問題に全力

 野村哲郎農林水産大臣は就任会見で、「食料の安全保障問題への対応に精一杯努力していきたい」と強調した。「国内食料需給率を向上させるうえで、コメ消費を拡大するには炊飯用途だけだとなかなか難しいと思う」と持論を展開。「麺やパンなどに適したコメを用いてコメ粉へ加工するなどの工夫を行うことで消費は増やせるのではないか」との考えを示した。

 また、「食料安全保障の大事な問題の1つである輸入依存度の高い肥料の原料価格高騰は、農業生産者の収益を圧迫する」と指摘。「岸田総理が生産者に肥料費増の7割補填する仕組みを表明したことは大変有り難かった。今後、不透明感を払拭するには、日本の発酵家畜糞などの資源を使い混合肥料をつくることが肥料の低コスト化につながり、食料安全保障問題の対応策になると思う」と語った。

 スマート農業の普及については「農薬散布に有用なドローンを例にすると、個人購入だと経費が嵩む。農業団体などが一括購入し、作業を請け負い生産者の負担を軽減する取り組みが必要」との考えを示した。

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