米イーライリリーが開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬について、安全性に対する懸念が浮上し、臨床試験が中断したことが分かった。同社は先ごろ、同治療薬の緊急使用許可(EUA)を米国食品医薬品局(FDA)に申請したばかり。トランプ米大統領に投与された米リジェネロン・ファーマシューティカルズの類似薬とともに、早期承認が期待されていた。複数の海外メディアが報じ、リリーが事実を認めた。

 臨床試験が一時中断されたのは、新型コロナウイルスに対する中和抗体をベースに創製された抗体医薬「LY-CoV555(一般名・バムラニビマブ)」。カナダのアブセレラ・バイオロジクスと開発した。国立衛生研究所(NIH)の主導で、入院患者1万例を対象とする臨床試験が行われていたが、データ安全性監視委員会(DSMB)から「安全性上の懸念」が指摘され、試験中断が求められた。リリーの担当者は海外メディアに対し、「DSMBの決定を支持する」と認めているもよう。

 リリーは今月7日、軽度・中等症患者を対象に米国でEUA申請を行った。根拠としたのは自社主導で行った別の臨床試験で、安全性の問題はないと評価した。9日には、同剤の低・中所得国向けの原薬製造を富士フイルムの米子会社が受託することも発表。中国企業から導入した別の抗体医薬と併用する治療法も、来月にはEUA申請する計画。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る