米国食品医薬品局(FDA)は9日、米イーライリリーが開発した新型コロナウイルス感染症に対する治療薬「バムラニビマブ」に緊急使用許可(EUA)を出した。軽度~中等症の患者に対する治療薬として緊急使用を認めた。同剤は回復した患者から採取した抗体をベースに作られた抗体療法。既存薬の転用ではなく、新型コロナ感染症に特化して開発された医薬品としては、世界初の実用化になる。

 12歳以上の小児/成人で、軽度~中等症だが重症化リスクが高い患者が対象。症状が出てから10日以内に、点滴静注で1回投与する。先月7日付でリリーがEUA申請していた。軽症~中等症患者を対象にした臨床試験で、入院する確率や救急外来の受診頻度が低下する傾向を確認している。入院が必要な重症患者についてはEUAの適用外。国立衛生研究所(NIH)が入院患者の臨床試験を行ったが、有効性が期待できないとして先月、同試験を中止した。

 バムラニビマブは、リリーがカナダのアブセレラと開発した抗体医薬。新型コロナ感染症回復者のモノクローナル抗体から、治療・予防効果が最も期待される中和抗体を選んで開発した。予防薬としての臨床試験も行っている。リリー日本法人によると、日本での開発状況や、EUAを根拠とした特例承認を申請するかは非開示という。

 米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」のように既存薬を転用するのではなく、コロナ治療に特化して開発された治療薬としては初めてのEUA。米リジェネロン・ファーマシューティカルズも先月7日、同様の抗体療法をEUA申請している。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る