米メルクは、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「モルヌピラビル」の開発で、感染初期の患者を対象に第3相臨床試験(P3)を開始すると発表した。入院患者に対する開発は、有効性が期待できないとして中止する。日本では健康成人を対象に臨床試験を開始した。また別の治療薬候補も、早期の実用化が難しいとして開発を断念した。

 モルヌピラビルのP2/3プログラムで、入院していない患者対象のP3パートを開始する。発症後5日以内の患者、重症化リスクがある患者を登録する予定。主要評価項目は、1カ月間で重症化・死亡した患者の割合。9、10月ごろに結果が出る見込みで、結果をみて年内に緊急使用許可を申請する。

 P2では入院患者に対する試験も行ったが、中間解析で十分な有効性は見込めないと判断し、P3への移行は断念した。

 日本では、健康成人を対象にP1を今月から始めた。約70例を登録し安全性や忍容性などを確認する。米国の治験登録情報によると、非・入院患者対象のP3には、現時点で日本は実施国に入っていない。入院患者対象のP2は入っていたが、現在は除外されている。

 同剤はウイルスの増殖を阻害するRNAポリメラーゼ阻害剤。富士フイルム富山化学のインフルエンザ治療薬「アビガン」と同じ作用機序を持つ。

 メルクは、入院患者を対象に開発していた、別のコロナ治療薬候補「MK-7110」の開発中止を決めた。追加の臨床試験などが必要になり、来年上期までの実用化は難しいと判断した。

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