日本触媒と三洋化成が経営統合中止を発表して半年が経過した。両社とも成長を追求するために、さまざまな手を打っている。その一つが組織改革。新年度を迎えた4月1日から新体制下で業務に励んでいる。

 日本触媒は単に製品を販売するのではなく、顧客の課題解決に向けた提案を行うソリューションビジネスを強化している。この一環でR&D(研究開発)を改編した。全体を俯瞰するのが経営直轄部署として新設した「R&D統括部」。新製品・新規事業を生み出す役割を担う事業創出本部と、紙おむつの吸収材料などに用いられる高吸水性樹脂(SAP)をはじめとした既存の各事業部の研究開発部隊との連携をさらに深めつつ、研究開発テーマを短期、中・長期に分け、全体戦略を立案し推進していく。

 事業創出本部の企画推進部は「事業開拓部」に改称した。新規事業の種をまき、事業化への活動を継続しつつ、既存の各事業部と協力しながら成果の社会実装にも重点を置く。

 事業創出本部にも新たな部門を立ち上げた。特異な機能を発揮する尖った技術・製品はユーザーが扱いにくいこともある。「事業化推進プロジェクト」ではニーズに合致した使い方を紹介するなどして1~2年の短期間で事業化に結びつける。

 三洋化成は大幅な変更を行った。既存製品の機構は社長直轄の7事業本部体制とした。界面活性剤事業本部など、営業と研究が一体となった事業本部を新たに4つ設置。各事業本部長への権限委譲を進め、意思決定の迅速化を図り適時、的確に要望に応えていくことで各事業を伸ばしていく。

 サステナブル(持続可能)な社会を実現するうえで企業の責務が一層強く求められている。対応を図るため同社は取締役会の下に「サステナブル経営委員会」を発足させた。グループの持続的な成長に向け、経済的価値と社会的価値を向上させるべく各種施策を協議し、意思決定を下す。事務局として運営を担当するのは副社長直轄(6月以降は社長直轄)の経営企画本部に新たに設けた「価値創造推進部」だ。ESG(環境・社会・ガバナンス)にかかわる価値を高めていくため、人事や広報など各所と連携しながら、国内外のグループ会社を含めたすべての社員に理解・納得してもらい一丸となって取り組みを進めていく。

 日本触媒、三洋化成ともに来春に新たな中期経営計画を始動させる。今回の組織機構改革が結実し、次期中計でさらなる飛躍を遂げられるのか。両社の動向に衆目が集まる。

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