明日からパラリンピックが始まる。スポーツの世界は番狂わせがよくある。無名の新人が勝利をかっさらったり、明らかに格上のチームが敗北したり。勝敗は生き物であり、その時の精神状態や時の運などさまざまな要素が複雑に影響するから、ドラマがあって面白い▼F1で非力な車に乗った若手が有力チームの車を次々に追い抜いたり、プロ野球で選手の年俸総額が低い球団が高い球団を抑えて優勝したり、相撲で小兵の力士が大柄な横綱を倒したり。個人的には大好きな展開だ▼先日、江戸時代に創業した老舗企業の社長が弊社を訪れた。失礼を承知で書くと、勝手に良家のお坊ちゃまを想像していたが、年齢は若いのに老成し苦労を重ねた様子がヒシヒシと伝わってくる。老舗に甘んじる様子はみじんもなく、むしろ今後どう生き残るか危機感を何度も口にする。一方で若手の従業員たちの話になると、目を輝かせて話していた▼スポーツと同様、ビジネスの世界も実力が物を言い、番狂わせはある。しかし企業は100年、200年と生きることができ、そこには脈々と受け継がれてきた生きる知恵がある。大変化の時代を迎え、これまでの知恵が通用しないかもしれない。しかし、その危機感こそが企業を変え強くするはずだ。老成した若社長と話し改めて気付かされた。(21・8・23)

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