日本アルミニウム協会が自動車材料のアルミ化によるCO2削減効果に関する調査報告書をまとめた。参画する経済産業省と経団連による「低炭素社会実行計画」の取り組みの一環として、需要構成で最も多い自動車について資源の採掘・採取~廃棄・リサイクルまでのバリューチェーンにおける鋼製部品との比較を定量的に示した。自動車に関しては、EV化の進展により素材製造時のCO2排出の影響が相対的に拡大している。脱炭素化に向けてライフサイクルアセスメント(LCA)をベースとした素材選びの広がりが予想されるなか、需要家に対する業界レベルでの対応が求められている。

 「自動車材料のアルミ化によるCO2削減貢献定量化調査報告書」は、共通部分として自動車の組み立ておよび廃棄・リサイクル段階を除いた資源の採掘・採取~走行時の軽量化によるCO2削減効果を1990年、2017年および20XX年で比較している。車1台当たりのアルミ使用量は、同協会のデータによると90年が76・7キログラム、17年が172・4キログラム。XX年は自動車産業調査機関の米センター・フォー・オートモーティブ・リサーチによる「テクノロジー・ロードマップ・マテリアルズ・アンド・マニュファクチャリング」の40年推定を参考に345キログラムとしている。XX年は17年比で板材が6・5倍、押出材が4倍、鋳鍛造部品が1・2倍に増えると想定している。

 1台当たりの年間のCO2削減量は、アルミ部品が鋼製だった場合と比較して90年が35・8キログラム、17年で83・4キログラム、XX年は225キログラム。自動車1台当たりのアルミ使用量が2倍になると、車体重量は136キログラム軽くなり燃費は1・44キロメートル/リットル改善する。これは1台当たり166キログラム/年のCO2減少に相当し、アルミの製造などにかかわるCO2負荷を加えても同141・5キログラム/年の削減効果が得られるためだ。これに平均使用年数と輸出を含む国内生産台数を乗じた生涯走行の排出削減量をみると、生産台数を同じと仮定した場合で17年の1070万4000トンから、XX年には2倍超の2886万7000トンになるとの試算結果が得られた。

 鉄鋼業界では、すでに19年に日本鉄鋼連盟が全鉄鋼製品(ステンレスを除く)を対象に環境負荷算定ルール(PCR)を策定し、優れたリサイクル性を製品価値に取り込む活動を展開している。グローバルでカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速するなか、単一素材はもとより、今後は複合材などでも同様の取り組みが求められてくることが予想される。

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