2度の世界大戦を教訓に創設されたユネスコ。平和を維持するに、人類はどう考え行動したら良いのか。その答えは-戦争は人の心のなかで生まれるものであるから、人の心のなかに平和の砦を築かねばならない-で始まるユネスコ憲章の前文に書いてある▼その前文を独断で煎じれば、世界のさまざまな民族・人民の多様性を理解し、誰もが平等で尊重される存在であると認識できる教育と、そうした教養によって生まれる良心に従い行動する人間性が必要である。そして、そうした考えや行動に共感する人々の連帯を断ち切らない政治が必要である、というようなことが書いてある▼さて、良心に従い行動するのは、日本人の美点である。財布やスマートフォンをうっかり紛失しても、高い確率で本人の元に戻ってくる。マナーの良さやオモテナシの精神、シャイで大人しい性格なども、日本人が良心に耳を傾け行動するためだ▼狡猾かつ利己的で、目的のためなら平気な顔で嘘をつく。大正から昭和の前半にかけて、日本の政治もそんな風潮だった。ユネスコの前文が日本人の心に響くのは、そういう時代を経たためだろう。高い代償と引き換えに誇るべき国民性を獲得した。だが、残念ながらただのお人好しでは乗り切れない。良心と自尊心の両立が必要な時代となってきた。(22・4・26)

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