花王は25日、理化学研究所(理研)などの研究グループと共同で、褪色しにくい蛍光たんぱく質を開発し、細胞微細構造やウイルスの定量的観察を可能にする技術を確立したと発表した。蛍光たんぱく質を花王と北里大などが開発した「新型コロナウイルスを中和するVHH抗体」に連結させ、感染細胞内でウイルス粒子が成熟する経路を捉えることにも成功。今回開発した蛍光たんぱく質は、蛍光観察の時空間の幅を飛躍的に拡張できることから、定量性を求める創薬開発への応用も期待される。

 花王や理研などの共同研究グループは、花クラゲ目に属する「タマクラゲ」の遺伝子発現解析データを基に、明るく極めて褪色しにくい蛍光たんぱく質「StayGold」(ステイゴールド)を開発。小胞体やミトコンドリアといった細胞小器官をStayGoldで蛍光標識することで、従来の蛍光たんぱく質では褪色のため解析できなかった動的構造変化を確認することに成功した。現在はStayGoldをめぐる共同研究の枠組みを広げ、細胞外小胞エキソソームや染色体構造たんぱく質などの動態解析も開始しているという。

 オワンクラゲやナメクジウオ、サンゴに由来する蛍光たんぱく質で細胞内の小胞体などの細胞小器官を蛍光標識し、生理的条件下で細胞小器官の挙動を鮮明に観察することが可能になっている。ただ蛍光たんぱく質は、励起のための光を増強させると褪色し、シグナルが減弱・消滅する欠点があった。褪色でバイオイメージングの性能の幅が制限される状況にあり、褪色しにくい(光安定性が高い)実用的な蛍光たんぱく質の開発が重要課題とされていた。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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