化学業界のみならず、今や産業界全体から注目を集める全固体電池。実用化は難しいとされていたこの電池は、一人の研究者が革新的な物質を創出することで、ポストリチウムイオン2次電池(LiB)の筆頭に躍り出た。ノーベル賞受賞者の吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)をして「画期的な大発見」と言わしめたのが、東京工業大学の菅野了次教授が見出した超イオン伝導体だ。固体でありながら液体を上回るイオン伝導率を持つなど、同伝導体は「科学的常識を覆した物質」とも評されている。全固体電池の本格的な社会実装が現実味を帯びるなか、菅野教授に現在の研究動向や全固体電池の将来展望などを聞いた。(聞き手=加藤木学)

 ◆…固体電解質の研究を始めたきっかけは。

 「1980年に三重大学工学部の助手として固体電池の研究に携わったことがスタートだった。LiBの研究が盛んな時期で、その熱気を肌で感じながら固体電解質の探求を続けていた。当時、固体の電解質は夢のような話だったが、銅などを使った固体電解質で電池を試作したところ、水溶液並みの抵抗であることが分かった。ただ、ある企業と組んでさまざまな研究を試みたが、どうしてもエネルギー密度を改善することができなかった。この物質の適用はあきらめざるを得なかったが、このことから学んだことがある。それは、固体でも電池は動くということ。電解液と同じくらいの抵抗を持つ物質があれば、固体の電解質でも電池に適用が可能だと確信した」

 ◆…2011年にリチウム超イオン伝導体のLGPS(リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄で構成される材料)物質系を創成し、16年にはその派生の固体電解質材料を発見しました。続きは本紙で

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