新型コロナウイルスの台頭から約5カ月、日本にもようやく治療薬が登場する。米ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」(日本製品名「ベクルリー」)について厚生労働省は7日夜の薬事・食品衛生審議会医薬品部会で審議。特例承認を適用する。富士フイルム富山化学の「アビガン」も月内に承認したい意向。このほか北里大学は抗寄生虫薬「イベルメクチン」の治療応用を計画している。

 レムデシビルはギリアドや米国立衛生研究所(NIH)による臨床試験の速報結果を受け、米国食品医薬品局(FDA)では今月1日(現地時間)、重症入院患者の治療薬として緊急使用許可(EUA)を出した。これを受けてギリアドは日本でも特例承認を4日までに申請していた。

 レムデシビルは短期間の製造が難しい希少な原材料を使用しているため、ギリアドは多くのサプライヤーと連携して増産する方針だ。化学メーカーや医薬品製造企業と非独占的な製造契約に向けて協議中。同社の本拠地ではない欧州やアジア、途上国向けに、2022年以降までレムデシビルの製造協力を求める。途上国向けの製造では、インドやパキスタンのジェネリック医薬品(後発薬)メーカーと協議しているほか、医薬品関連の国際機関を通じて特許を提供して他社による製造を認める予定。

 日本からは、広栄化学工業が同剤の骨格を形成する原料「ピロール」の増産に着手する。

 ギリアドは契約している原薬メーカーや医薬品製造支援(CMO)企業と調整し、月末までに14万人分を全世界向けに準備。調達・委託先をさらに広げ、10月には50万人分、年末までに100万人分を供給する計画だ。いずれも1人(1治療)につき10日投与することを前提としているが、臨床試験では5日投与でも効果が示されたことから、目標供給量を前倒しで達成できる可能性もある。

 日本発の治療薬ではアビガンが承認に最も近く、イベルメクチンも効果が見込めるとして治験が計画されている。このほかに「フサン」「アクテムラ」などが治療薬候補に挙がっている。

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