子育てや人材育成では「褒めて伸ばす」「叱って伸ばす」という考え方がある。概して言えば他人から褒められて嬉しくない人はいないだろう。その効果は精神的な満足感だけではなく、運動技能の習得にも影響することが分かってきたという▼それでは褒められる相手が人ではなかったら。筑波大学などの研究グループがロボットやCGキャラクターといった人工的エージェントによる褒めが人の運動技能の習得にどのように影響するかを調査した▼大学生にキーボードのキーを順番に早く叩く実験を行ったところ、褒めがない場合より褒めがあった場合の方が翌日の指運動のパフォーマンスが有意に向上した。褒める回数は同じでもエージェントの数が1体よりも2体の方がパフォーマンスが向上した▼興味深いのはロボットとCGとの差が認められなかったことで、物理的、仮想的を問わず身体性を持つエージェントには褒め効果があった。こうした研究は介護、リハビリテーションなどを支援するエージェントシステムの開発に生かされる可能性がある▼今後は身体性がないスマートスピーカーなどのデバイスではどうなるかを調べるようだ。人工的な存在とのコミュニケーションのあり方はこれからもっと重要になっていくだろう。褒められるにしても叱られるにしても。(20・11・13)

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