新型コロナウイルスの感染拡大によって懸念されているのが財政悪化。経済活動の停滞による歳入減少に加えて医療体制の整備、各種の財政支援で支出が増加した。国際通貨基金(IMF)によると、2020年末時点における新型コロナ関連の経済対策は世界全体で約14兆ドルに及ぶという▼財政難という共通課題を抱えた各国が新たな財源を求めて動き出した。7月にイタリアで開催されたG20では国際的な課税ルールの見直しで2つの大きな「歴史的合意」があった▼一つは法人税の最低税率を15%以上とすること。多国籍企業が税率が低い国・地域に拠点を置くなどして租税回避することを防ぐのが狙い。先進国のみならず途上国も税率を引き下げて企業誘致を競ったが、成果は思ったほどではなかったのだろう▼もう一つは「デジタル課税」。これまでは工場などの実体的な拠点があることを課税の条件としていたが、サービスを享受するユーザーがいて利益を出していれば、その国でも課税が可能になる。コロナ禍でも利益を拡大している巨大IT企業への課税を強化したいようだ▼グローバル化、デジタル化はさまざまなルールの変更を生み出してきた。さらにカーボンニュートラルが新たなルール作りの引き金になろうとしている。国際協調の一方で競争も当然激しくなるだろう。(21・9・3)

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