新型コロナウイルス感染症の治療に最前線であたっている医療従事者に、敬意と謝意を表すことはできないか-。資生堂はこうした想いから「Hand in Hand Project」を立ち上げた。プロジェクトでは、一人ひとりが感染予防に取り組むことでその表明につながればと、生活者へ手洗い・消毒・ケア(保湿)の習慣化を呼びかけている。取り組みを統括する資生堂ジャパンの石川由紀子CMO(チーフマーケティングオフィサー)に背景や目指すところを聞いた。

 <現場に利益寄付>

◆…どのようなプロジェクトですか。

 「医療現場の方々に謝意を伝えたいと、私たち一人ひとりが新型コロナウイルス感染症の予防に努め、健康で過ごすことを目的としている。そのうえで手洗いと手指消毒は欠かせないが、徹底するほど、手荒れに悩むことになる。そこで手洗い、消毒、ハンドクリームでのケアまでを『手守り習慣』と名付け、テレビやウェブで啓発していくことで、感染予防に少しでも貢献できたらと考えた。生活者がハンドソープや手指消毒剤、ハンドクリームを購入してくれたことを浸透の証とみなし、2~4月のプロジェクト期間中でのこうした商品の販売にともなう利益を医療現場に寄付する仕組みも設けている」

◆…始めた理由は。

 「手荒れに配慮した消毒液を昨春開発し、医療機関を中心に提供してきた。夏から一般販売を始めたが、生産や物流体制の関係で当初は首都圏限定だった。12月の全国発売を機に、魚谷雅彦社長から『この利益を医療現場に寄付するようなキャンペーンを企画できないか』と相談を受けたのが始まりだ」

 <わずか1カ月で>

◆…キックオフから開始までわずか1カ月でした。

 「1月6日のキックオフ後は営業やマーケティング、生産・物流などさまざまな部門から集まった約50人で毎週ミーティングを重ねてきた。はじめに、メンバーが自身のSNS(交流サイト)ネットワークで医療現場の声を集めてくれたことで『一人ひとりが感染予防に気を配る』『そのために手守り習慣を提唱する』とのゴールが早々に定まった。ゴールに向けてどの道をどういった速さで歩むかとメンバーが自発的に行動してくれたこと、縦割りではなくフラットな組織だったことに加え、ドラッグストアや化粧品専門店といった取引先のご協力も得られたことで、通常は半年かかる企画や商談などの工程を2週間余りで終えることができた」

◆…活動期間も終盤に差し掛かっています。

 「前半では一人でも多くの人に活動を知ってもらいたいと、テレビCMやウェブ動画で発信してきた。動画のシェアや『いいね』で生活者に賛同を表明してもらえる仕組みも設けており(1アクションにつき10円を資生堂から医療現場に寄付)、想定よりはるかに多くの人がアクションを起こしてくれたことから、手応えを感じている。後半では手守りを習慣化してもらえたらと、ユーチューバーのけみおさんによる感染者へのインタビューなどを公開中だ」

 <役割は変わらず>

◆…コロナ下における化粧品の役割とは。

 「マスク生活が日常となり化粧機会が減ったとはいえ、目元メイクやヘアスタイルで対人印象を変えることができる。そうした提案や、巣ごもり生活でいかにリラックスするかといった美容情報を『毎日、マスクといい関係』として取りまとめ、発信している。化粧品に世の中を動かすようなことはできないが、ポジティブな気持ちをもたらすなど、日々の生活を豊かにすることはできる。暮らしに彩りを与えるような貢献を探っていきたい」(聞き手=藤本わかな)

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