世界では3秒に1人のペースで認知症患者が増えているという。日本は2025年には高齢者(65歳以上)の5人に1人が認知症になるという推計もある。人口の約3割にあたる3600万人強を高齢者が占める日本は、諸外国に例を見ないスピードで高齢化が進む▼しかし画期的な新薬が登場した。認知症の半分以上を占めるアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認され、日本でも承認審査が進んでいる。米バイオジェンとエーザイが開発したもので、症状の進行を抑制する根本的治療薬として期待が集まる。これ以外にも、米イーライリリー、スイスのACイミューンなど多くの製薬企業が治療薬を開発しており、成果が待たれるところ▼世界に先駆けて超高齢社会となった国、日本。高齢者も安心して暮らすことのできる社会をどう作り上げるのか。成功モデルを構築できれば、他の国々にも応用できる。すでに中国は昨年、人口が初めて減少に転じ、高齢者の割合が14%を超える今年から「高齢社会」に突入する。働き手が不足し、社会保障負担が増大するのは火を見るより明らかだ▼G7では自国第一主義を強める中国への対抗策などが議論されたが、近視眼的な対症療法の印象だ。世界共通の社会課題解決に向け、国や地域を越え手を携える時である。(21・6・14)

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