最近あまり聞かなくなった言葉だが、プロ野球などのナイター照明は「カクテル光線」と呼ばれている。2種類以上の光源を混合して性能を補完するのが目的で、お酒のカクテルが名前の由来。スタジアムなどの大空間ではメタルハライドランプと高圧ナトリウムランプを組み合わせることが多いという▼目下セリーグ首位の阪神タイガースの本拠地、甲子園球場の照明が今シーズンオフにLED化されることになった。伝統的なカクテル光線を特注のLED照明器具で再現しながらCO2排出量を約60%削減する。文字や図柄も描写できるようになる▼ナイター用LED照明の進歩は目覚ましく、次世代テレビ放送向けの技術が多く盛り込まれている。その一つが4K8K放送への対応。従来のハイビジョン放送に比べ色域の再現領域が広がり、より高品質な映像が可能になる▼LEDの点灯技術も工夫されている。スポーツ中継ではスーパースロー再生が多用されるようになっており、明暗の繰り返しで起きるチラツキを抑制することで見やすさが向上する▼東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場のLED照明にもこうした先進技術が採用されている。たとえ現場にいなくてもテレビ中継を通してアスリートたちの活躍を十分に堪能できるはずだ。(21・7・9)

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