きのうがきょうになっただけのことだが、この一日の切り替わりが年度を改める。きょうから2020年度。言うまでもなく、ほとんど過去に例をみない、未曾有といってもよいほど重苦しい新年度の始まりである▼先行きはもちろん楽観できない。非常時に備えて、行政、企業、学校、地域、家庭などあらゆるレベルの主体が対策を考え、影響を最小限にとどめようとしているはずだ。世界経済そして国内経済への深刻な影響も出始めており、米国や日本では過去最大級の緊急経済対策を打つ▼放送、新聞などメディアにはいま、なにが求められるだろう。日々積み上がるデータを目の当たりにすれば、悲観的な報道に偏ってしまうのを避けるのは容易ではない。しかしそのような中でも、好材料を見つけ、明るさや希望も社会に伝えていくことはできよう▼メディアは社会の「空気」を大きく左右する力をもっている。そのことを改めて認識し、まずは事実の丹念な取材と冷静な分析に徹するべきだろう。視聴者や読者が欲しいのは正確な情報と筋道だてた分析のはずである▼数日前の日曜日、東京などで季節外れの雪が降った。桜開花後の降雪を普段なら喜べないが、今年ばかりは違った。空気にただよう悪しきものを、とめどなく落ちてくる白い結晶が雪いでくれそうな気がした。(20・4・1)

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