中国の企業が国内外で新型コロナウイルスワクチンの供給基盤を整えている。雲南沃森生物技術股〓有限公司は中国初となるメッセンジャーRNA(mRNA)型の新型コロナウイルスワクチン工場を10月にも稼働する。年2億本の生産能力で立ち上げ、来年にも見込む実用化に備える。不活化ワクチンを手がける中国医薬集団(シノファーム)もセルビアで欧州初の拠点構築に取りかかる。

 雲南沃森の工場は雲南省玉渓市の医薬産業園内に位置し、傘下の玉渓沃森生物技術有限公司が運営に当たる。総投資額は5億2000万元。雲南沃森が中国軍事科学院軍事医学研究院、蘇州艾博生物科技有限公司と共同開発したワクチンを生産する。

 約10カ月かけて、建設を進めていた。原料や鍵を握る生産設備については国産化を果たしたという。同社によると、2~8度Cの温度帯で保管や運送が可能としており、取り扱いのしやすさを強調している。

 現在、中国国内では高齢者を含めた18歳以上を対象とした第3相臨床試験(P3)を実施中。また、8月にはメキシコやインドネシアなどでグローバルP3を開始した。同社の資料や現地報道などによると、現時点で判明している有効率は92・4%だといい、先行するmRNAワクチンに比べても一定の水準を確保しているとしている。

 一方、不活化ワクチンを展開するシノファームも今月、セルビアで新工場建設に着手した。同社の新型コロナウイルスワクチンを生産し、能力は年3000万~4000万本とする計画。同国のほか、バルカン半島の周辺国をはじめとした欧州域内にも輸出する構想を描く。

 シノファームだけでなく、中国が新型コロナウイルスワクチンの工場を欧州に置くのは今回が初めてだ。セルビアでは米ファイザー、英アストラゼネカ(AZ)など複数メーカーのワクチンを打てるが、中国が積極的に供給したこともあり、シノファーム製ワクチンの接種率が高いという。

 今回、ワクチンの現地生産を行うことで、シノファームはセルビアでのシェアを一段と高める構え。また、ワクチン不足に苦しむ旧東欧諸国向けの供給拠点としても活用していく。

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