米国の映画業界では「シアトリカル・ウィンドウ」というルールがある。劇場での独占公開期間を指し、かつては半年間だったらしいが、今は約3カ月間とされる。いわば配給側が劇場側に配慮したもので、それまではDVDの発売やデジタル配信など2次利用を自粛している▼しかし、新型コロナウイルスの感染拡大にともない外出禁止令が広がり劇場も封鎖されている。そうしたなか大手配給会社が一部の作品のデジタル配信を前倒しするとのニュースが流れた▼劇場に足を運んで入場料を払ってもらわなければ商売あがったり。配給側のルール破りもやむなしといったところか。自宅に閉じこもっている人たちに娯楽を届けるというのも正当化の理由のようだ。映画だけでなく、こうした非常事態が業界ルールを変える可能性がある▼日本でもスポーツ、コンサートなど催しの延期・中止が相次いでいる。せっかくチケットが取れたのに残念な思いをしている人は多いだろう。一方、公演をしなければ収入がなくなるという切実な問題も顕在化している▼そこで注目されているのが「投げ銭」。以前からあったシステムで、例えば無観客ライブをネット配信し、それを見たファンが課金する。生ならではの興奮は味わえないが、難局に対応するデジタル時代の新たな手段の一つといえよう。(20・4・3)

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