全国紙の人物欄に、林璃菜子さんが京大医学部に飛び級入学したという記事が載っていた。この名前どこかで見たな、と思いながら読み進めると、国際化学オリンピックで銀メダル獲得という記述があった。ここではっきり思い出した。昨年の化学五輪入賞のニュースだ。璃菜子という名前がユニークだったので記憶にひっかかっていたのだろう▼小学生のころに炎色反応や有色イオンのきれいな写真を見たのが、化学に興味をもつようになったきっかけだという。東大CASTの学生たちにインタビューしたこともあるが、彼らも実験などで目の前で起こる反応の美しさへの感動によって化学の世界に引き込まれたと語っていた▼さて、飛び級だが、現在日本では京大、千葉大、東京芸大など7大学で学部を限定して行われている。理系や芸術など専門性が強く求められる分野で認められている。優れた人材は、本人が求めるなら高いレベルの環境に積極的に進めばいいと思うが、社会性獲得の問題などそう簡単ではない事情もあるかもしれない▼生きるということが、人や自然とのたえまない反応の連続だとすれば、この飛び級はひとつの美しい効率的な反応といえるのかもしれない。きれいな写真や教員の上手な授業や実験が、その重要な触媒になるということだろうか。(21・5・24)

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