小欄のネタをどうしようかと考えあぐねていると、ふとネタとは何だろうと気になった。答えはタネの倒語で、古くは江戸時代から飯のタネとなる商品のことをネタと呼んでいたらしい。話のネタ、取材のネタ、寿司のネタ、現代でも様々に使われている。刑事ドラマで「ネタはあがっているんだぞ」と容疑者に迫る台詞もよく耳にする▼刑事はデカと呼ばれるが、これも倒語がベースになっている。大昔の刑事は警官の洋式の制服ではなく、和式の角袖の着物を着ていたようで、カクソデを逆さ読みし最初と最後を取ってデカ。また家宅捜索をガサ入れというが、ガサはさがすの逆さ読みが語源となっている。警察や芸能界などの業界には特有の隠語が多い▼マスコミ業界にも特有の用語はある。たとえば囲み取材、ぶら下がり取材など。会見が終わった後、会見者を記者たちが取り囲んで、会見で出なかったネタを聞き出そうとする取材。厳密には、囲みは会見者が立ち止まっている状態、ぶら下がりは移動している状態をいうが、最近は一緒くたにぶら下がりということが多い▼コロナ禍で会見はオンラインが大半を占め、会場で開催される機会がぐっと減った。オンラインではぶら下がりのチャンスはない。記者として飯のタネを減らさない方策を編み出す必要に迫られている。(21・8・2)

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