エネルギー価格の高騰が続いている。この1年でアジア向け石炭価格は4~5倍に、欧州の天然ガス価格は10倍以上に、原油価格も米国先物が7年ぶりに1バーレル当たり83ドルを突破した。北半球はこれから冬を迎え、暖房用の燃料需要が増加するので、さらなる価格上昇が懸念される▼石炭価格の上昇は、中国が確執を続ける豪州からの石炭輸入に制限をかけたことが背景、と巷では説明されている。中国が豪州以外の石炭の買い付けに走って相場が上昇した、というのだがどうも理解できない。お客が減った豪州の石炭には余裕ができるため、世界全体でみれば需給バランスに変化はないはず。不思議な話だ▼これだけ石炭が悪者扱いされている時代なのだが、石炭がなければ皆が困ることが露呈してしまった。中国は石炭の確保が十分できず、深刻な電力不足に追い込まれた。そして、石炭価格の上昇が代替エネルギーの天然ガスの価格を引き上げ、さらにそのライバルの原油に価格上昇の口実を与え、世界中の消費者が困っている▼と言いたくなるが、実際にはそうとも限らないようだ。エネルギー価格の上昇は、それが極端ではなく、川下に価格転嫁できるならむしろ経済にとって良い面が少なくない。巷ではそう言われている。本当のところは定かでないが、そう願いたい。(21・10・19)

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