◇カネカ

 カネカの2021年3月期決算は減収ながら増益となった。前期比5・9%増の275億円となった営業利益のうち下半期で200億円を稼ぐなど、第3四半期以降の業績回復が顕著。塩ビ市場の回復、ポリイミド(PI)製品が貢献した。売上高は前期比4・0%減の5774億円、経常利益は9・4%増の220億円、純利益は13・1%増の158億円だった。

 マテリアル部門では、アジアで塩ビ需要が急回復。樹脂改質剤が欧米での建材・DIY用途やアジアでの自動車、家電向け販売を伸ばすとともに、変成シリコーンポリマーの販売がアジアでの建築用途開拓などで下半期の販売数量が過去最高水準となった。同部門の営業利益は12・8%増の233億円だった。

 ヘルスケア部門はコロナ関連が拡大。アビガン原薬、PCR検査試薬、ワクチン中間体の受託製造の受注が急拡大し、同部門の営業利益28・2%増の114億円となった。

 クオリティオブライフ部門は頭髪用繊維のアフリカ向け需要がコロナ禍の打撃を被ったことなどで営業利益は24・9%減の107億円となったが、電材のPIフィルムの販売が過去最高水準となった。

 今期は売上高が7・4%増の6200億円、営業利益が34・3%増の370億円、経常利益が47・3%増の325億円、純利益が39・0%増の220億円を計画する。コア事業に位置づける塩ビ樹脂の旺盛な海外需要を販売拡大につなげる。先端事業群の収益力も高める。営業利益に占める同事業群の比率を30%以上にしたい考え。PIフィルムや医療・医薬新製品の販売に力を入れる。

 ◇住友精化

 住友精化の2021年3月期決算は増収増益を達成した。売上高と営業利益は過去最高に迫り、経常利益と純利益は過去最高を更新。第1四半期に中国において紙おむつ向け吸収材料の高吸水性樹脂(SAP)の販売数量が増加したことなどが収益増につながった。

 SAPを扱う吸水性樹脂セグメントの売上高は前年同期比5%増の692億円、営業利益は同64・7%増の58億円。機能化学品セグメントも増収増益を果たした。ラテックス製品や医薬中間体が堅調に推移するとともに、新型コロナウイルス感染症まん延にともない消毒ジェル用増粘剤も伸びた。ガス・エンジニアリングセグメントは増収減益となった。新型コロナの影響で飲食店が営業時間の短縮や休業したことで、利益率の高い食品用ガスの需要が減少したことが響いた。

 今期予想は売上高1090億円、営業利益70億円、経常利益70億円、純利益50億円。SAPをはじめナフサ連動する製品の原材料価格上昇により増収減益を見込む。

 ◇堺化学工業

 堺化学工業の2021年3月期決算は、コロナ禍の影響で自動車関連材料、医療事業などの主力製品が落ち込み、売上高は前年同期比2・6%減の849億1800万円で減収となった。営業利益は製造コストの低減や経費削減施策が奏功し、同7・2%増の43億0400万円、経常利益は同4・7%減の40億1200万円となった。

 誘電体材料をはじめとする電子材料は5G基地局、通信機器向けが順調に推移。車載向けも徐々に回復した。酸化チタンは巣ごもり需要で食品包装用グラビアインキ向けが伸長。亜鉛製品は10月以降タイヤ向けが増加したが、上期の落ち込みをカバーすることはできなかった。化粧品材料は外出自粛やインバウンド需要がなくなり売上高、利益ともに大幅減。樹脂添加剤は国内は落ち込んだが、海外は好調だった。

 今期は売上高763億円、営業利益47億円、経常利益51億円を計画。なお、先日発生した湯本工場(福島県いわき市)の火災が今期業績に与える影響は調査中。

 ◇第一工業製薬

 第一工業製薬の2021年3月期決算は営業利益が前期比8%増の44億8500万円だった。電子デバイス材料の増収や価格是正、拡販などの営業努力に加え、外出自粛や移動制限などにより営業経費が減少した。純利益はライフサイエンス事業の固定資産の減損処理などによる特別損失が発生したが、株式の持ち合い解消にともなう投資有価証券売却益を計上した結果、同27・2%増の25億6300万円。

 売上高は同3・8%減の591億4000万円。IT・電子用途向けの光硬化樹脂用材料が引き続き堅調だったのに加えて、ディスプレイ用途のイオン液体、太陽電池用途の導電性ペーストなど電子デバイス材料の売上高が大幅に伸長した。一方、界面活性剤の売り上げが減少したほか、自動車関連分野の需要低迷の影響を受け、ウレタン材料が振るわなかった。

 今期は売上高615億円、営業利益51億円、経常利益48億円、純利益34億円の増収増益を見込む。

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