先週、ちょくちょく顔を出す居酒屋でビールを注文しようとメニューをみると値上がりしていた。この間、客の入りが芳しくなく売り上げが減少したので値上げに踏み切ったのかと思ったら、4月から消費税込みの総額表示に切り替えたとのこと▼調べてみると、2004年から総額表示が義務づけられていたが、消費税は段階的に引き上げられることが決まっていたので、値札変更など店側の手間を減らす目的で13年施行の特別措置法によって本体価格の表示が認められていた。その法律が3月末で失効したため総額表示が義務化された▼これによってさらなる消費冷え込みを懸念する声が出ているようだ。支払う金額は変わらないはずなのに、値上げされたかのように受け取ってしまう消費者心理は分からない訳ではない▼思い切った手を打ったのがユニクロ・GUを展開するファーストリテイリング。従来は税抜きで価格を表示していたが、総額表示にして価格を変更していない。つまり本体価格を実質値下げした訳だ。お得感を打ち出して需要を喚起するのが狙いだろう▼その居酒屋ではついつい安めの料理を注文し、お酒も少し控え目で出てきた。いつもより安い勘定ですみ、経済的に助かり健康的にも良い。ただ、それが“ニューノーマル”になるかどうかは自信がない。(21・4・9)

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