デジタル時代を迎えて企業が人工知能(AI)やアルゴリズム(計算手法)を活用するのが当たり前になってきた。ECサイトで買い物をすれば顧客の好みを学習して、こんなものはどうですかと提案してくる。サイト間の競争も激しさを増している▼しかし、使い方によっては公正な競争を阻害する可能性がある。公正取引委員会はこのほどデジタル時代における競争政策に関する報告書をまとめた。AIやアルゴリズムが自動的に値段を決めることがカルテルになるのか▼従来、カルテルは企業間の合意や情報交換の立証が必要。人間が関与するのが当たり前だったが、アルゴリズムを利用した協調的行為になると、それらを明らかにすることが難しくなる▼複数の企業が共通のアルゴリズムを使うことにより価格が相互に同調することを認識し、それを許容している場合は独占禁止法に違反する可能性がある。各企業が独立して行動しているとはいえず意思の連絡があると考えられる▼市場で有利な立場にある事業者が競争相手と共通する顧客のみを狙い撃ちして、低い価格を設定して競争相手を排除する場合も問題になり得る。顧客には恩恵がある半面、囲い込まれた結果、高値をふっかけられても分からないかもしれない。ECサイトは確かに便利だが深入りしない方が賢明か。(21・4・30)

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