アストラゼネカ(AZ)日本法人は、新型コロナウイルスの変異株に対応したワクチンを国内導入する検討を開始した。日本の薬事当局が発表した変異株対応ワクチンの開発指針を受けて、海外の治験結果を活用し日本での実用化を当局と協議する。また、従来のオリジナル株を前提に開発したワクチンの国内供給に向けて、欧州の輸出制限措置による影響はないとの見通しも明らかにした。

 6日に開催したAZ日本法人の業績発表会で、ワクチンの国内開発を担当する田中倫夫・研究開発本部サイエンス&データアナリティクス統括部長が、変異株対応ワクチンの開発計画などを説明した。各国で接種が始まっている既存ワクチン(AZD1222)は、英国型、ブラジル型変異株に対する効果はあるが、南アフリカ型変異株に対する効果は低いとみている。英AZは南ア型に対応した改良ワクチンの開発に着手し、年央にも海外で臨床試験を開始する予定。

 日本では、国内単独の治験は行わずに、海外治験の結果を活用した承認申請が可能か検討する。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が5日、変異株ワクチンの開発指針を発表し、ウイルスの遺伝情報のみを使って開発するような新しいタイプのワクチンの場合、諸条件を満たせば承認申請までに国内治験は必須ではないとの見解を示した。これを受けてAZは、同社のワクチンが対象になるかも含めて「PMDAと相談しながら、できるだけ早く日本へ供給できる方法を決めたい」(田中氏)考え。

 日本で申請中の既存ワクチンは、承認審査に必要な治験データがすべて出揃い、5月にも承認される見込み。日本政府と契約した供給量1億2000万回分のうち、最大3000万回分のワクチン原液はAZが海外から輸入する。欧州では域外へのコロナワクチン輸出を制限する措置が行われているが、田中氏によると「基本的にEUの輸出制限は日本への供給に何ら影響を及ぼしていない」という。

 同社は当初から日本で生産することを重視して準備しており、輸入分も米国で製造したものを直接日本へ運んでいる。3月に到着した輸入分は第一三共バイオテック、KMバイオロジクスによる充填・包装が始まっている。原液9000万回分以上を受託製造するJCRファーマも製造を開始し、3月末に初出荷した。

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