トヨタ自動車が6月初、国内外の主要な部品、1次サプライヤー(ティア1企業)、メーカーを集め「自動車生産プロセスに関わるカーボンニュートラル」対応のキックオフイベントを行った。そこでトヨタと直接取引のある部品各社に対し、2021年のCO2排出量を「前年比3%削減する」要請が出た。トヨタの本社関係者によれば「『要請』という言葉が独り歩きしたが(トヨタも含め)自動車産業に携わる各社で一緒に乗り越えよう」という共闘宣言のようなものだとか。

 トヨタ自身も11日、全世界の工場におけるCO2排出量を実質ゼロにする目標を、従来の50年から35年に前倒しすると発表。国内最大手企業がカーボンニュートラルへ大きく動き出した。日本の自動車産業は、エンジンをはじめとした生産技術を誇り、内燃機関ビジネスを得意分野としてきた。脱炭素化は、これらを「大きく縮小させる」(名古屋の部材系3次商社)懸念もある。自動車工業会会長を務めるトヨタの豊田章男社長は過日、経済産業省の急峻な日本のEV化ビジョンにクギを刺しつつも、カーボンニュートラルの潮流は「日本の自動車産業が乗り越えるべき重要課題」との考えを示した。

 主要な1次メーカーの動きをみてみる。デンソーは、主力工場の安城製作所(愛知県安城市)内に生産プロセスで生じるCO2を固定化し、これを回収、エネルギー源として再利用する実証プラントを4月に立ち上げた。同時に人工光合成によるエネルギー循環の確立に向けた取り組みも正式に表明。車部品メーカーという枠にとどまらず、人工光合成による再生エネルギーの積極利用などを加速させ新たな企業像へ走り出した。

 アイシンもグループを挙げた省エネ活動はもちろんのこと、先ごろ愛知県豊田市と協定を結んで「家庭用燃料電池エネファーム」のさらなる市内普及を目指す本格実証に入った。家庭への導入に市が積極的な補助政策を実施。家庭に設置された定置型燃料電池からのCO2削減量をクレジット化して、市内の生産工場や企業との取引で相殺。地域消費型のCO2循環スキーム構築につなげる。

 豊田合成も、30年までにCO2を15年度比50%削減する目標を明示。とくに生産拠点や事業所などで使用する電力を今後、再生エネルギー由来の電力へ積極転換する。すでに愛知県内の自社工場で、風力や太陽光発電の導入を拡大中だ。これらトヨタグループの積極的な姿勢は、2次メーカーや、各種樹脂や塗料などのメーカーにも確実に広がると見込まれる。素材各社も注視する必要があろう。

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