DHLはこのほど、新型コロナウイルスワクチンの輸送における官民連携に関する研究報告書を発表した。それによると、2020年第4四半期中(10~12月)に、新型コロナウイルス感染症ワクチンに対する最初の緊急使用許可が発効されることが見込まれることから、物流事業者は官民と連携したメディカルサプライチェーン(SC)を確立し、100億回分を超えるワクチンを輸送することが求められるとしている。

 報告書によると、現在7つのプラットフォームで250種類以上のワクチンの開発と臨床試験が進められている。新型コロナウイルスのワクチンはリープフロッグ型で開発されており、輸送や保管の間もマイナス80度C以下の状態を保つ必要があるとしている。従来、2~8度C帯でワクチン輸送していた既存のメディカルサプライチェーンには新たな問題になっている。

 DHLは、ワクチンを輸送し効果的に管理する方法について検討している。そのなかで全世界にワクチンを行き渡らせるためには少なくとも20万個のパレット貨物と1500万回の保冷庫での配送、1万5000回のフライト空輸が必要になると考えている。

 また、将来の公衆衛生上の危機管理について官民の連携も含め言及している。公衆衛生上危機の初期段階で最も重要なパンデミック対応管理の一つが、治療現場に離れた場所から医療用品を調達して治療の最前線に届けることだった。とくに医療従事者用個人防護用具(PPE)の場合、製造地が特定の地域に集中しており、空輸能力が限られて輸入時の品質検査態勢も不十分な状況でのインバウンド物流が最大の課題となった。

 DHLは、ワクチン輸送になると物流の規模や厳格な温度条件という観点から状況は変わると指摘する。官民が緊密に連携して緊急ニーズに対応する必要があるとしている。

 医薬・医療品の物流に対するパンデミック対応を向上させるため、ライフサイエンス業界に加えて規制当局、政治家、NGO(非政府組織)を巻き込んで物流企業連携のための枠組みを提供する必要がある。この枠組みを活用することによって、最も安定的で安全なサプライチェーンを確保するための手段を確立することができるとしている。

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