日本の自動車事故第1号は電気自動車だった。しかも皇居のお堀に転落するという派手な事故だったという。121年前のきょう、皇太子(後の大正天皇)の結婚式が行われたが、これを祝して米国の日本人会から1台の電気自動車が寄贈され、事前に宮内庁が試運転したところ、ブレーキが効かなかったのか操作を誤ったのかは分からない▼自動車といっても馬車のような4輪車で、最高時速は30キロメートルに満たなかったようだ。公用車としてはお蔵入りとなるが、修理後に運転披露式は行われ、皇太子の感想は「ことのほか遅きものである」だったらしい▼21世紀も早5分の1が過ぎ、自動車は大きく進化している。電気自動車(EV)でも最高時速300キロメートルを遙かに超え、航続距離も数百キロメートルが当たり前になっている。電池とそれを支える材料の進化が、自動車の世界を一変させる可能性がある。カメラやセンサーといった先進安全技術により、自動車事故も減少の一途を辿る。自動運転技術によって近い将来、事故が限りなくゼロに近づく可能性もなくはないだろう▼しかしEVの進化にばかり目が向きがちだが、人類はそれに見合う電力量を確保できるのか。人口が増えるなか経済発展を目指す以上、エネルギー問題は常に付きまとう。ここでも化学の力を発揮できるチャンスだ。(21・5・10)

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