KMバイオロジクスの永里敏秋社長は、化学工業日報の取材に応じ、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて「早ければ今年12月にも第1相/第2相臨床試験(P1/2)に入れるめどがついた」と語り、さらなる前倒しが見込めることを明らかにした。開発・製造で必要となるウイルスの「培養条件の検討がうまくいったため」で、順調に行けば来年末にはP2を終える見通しだ。

 早ければ年内にもヒトでのP1/2入りするめどを得たのは、同社が中心となって開発を進めている不活化ワクチン。日本医療研究開発機構(AMED)の企業主導型採択課題にも選ばれ、国立感染症研究所(感染研)、東京大学医科学研究所(東大医科研)、医薬基盤・健康・栄養研究所と連携し、取り組んでいる。

 今年5月にKMバイオロジクスは新型コロナウイルスワクチンの開発に乗り出すことを発表。年度内に非臨床試験を完了し、2021年度に治験入りする計画を掲げた。その後、進捗を踏まえ、7月には今年度内にもP1/2に入るとの見解も表明していた。

 ただ、新型コロナウイルスの培養条件の検討が順調に進んだことから、「今年12月から来年1月にかけての治験入りが見込める」とし、3カ月の前倒しに漕ぎ着けた格好だ。来年末には終えたい考えで、第3相臨床試験(P3)の見通しについては、「医薬品医療機器総合機構(PMDA)との話し合い次第」とした。

 新型コロナウイルスワクチンの実用化を「研究開発の優先課題」に位置付けている。非臨床試験も急ぎ、治験で用いるワクチンについては菊池研究所(熊本県菊池市)で生産する。

 大規模製造に際しては、17年に竣工した合志事業所(熊本県合志市)に整備した新型インフルエンザワクチンの設備活用を念頭に置く。同ワクチンで5700万人分の能力を確保ずみで、既存設備の利活用を通じ、開発中の新型コロナウイルスワクチンも迅速に供給できるようにしていく。(吉水暁)

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