温暖化ガスの排出を実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル」に向けて世界が動き出した。だが、その実現にはさまざまな要素技術の開発を急ぐ必要がある。リチウムイオン2次電池(LiB)の開発で2019年のノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローに、脱炭素時代を切り開くカギを聞いた。

★…2050年までのカーボンニュートラル目標をどのように受け止めていますか。

 「結論から先にいうと、カーボンニュートラルに向けた方向性がみえると、意外と早く実現できるというのが私の考え方だ。IT(情報技術)革命が参考になる。IT革命は米マイクロソフトの『ウィンドウズ95』が発売された1995年にスタートが切られたが、2000年代にはモバイルやノートパソコンを使うことが当たり前になった。ビジネスチャンスが生まれる機運が高まることで産業界が一斉に動き出し、わずか5年で世界はがらっと変わった」

 「ただし、IT革命がスタートを切るまでに15年ほど綿密な準備期間が必要だったというのも大事な教訓だ。LiBの研究開発も80年代が出発点になっている。半導体やディスプレイ、LiBなどの要素技術が組み合わさり、これまでの不可能が可能になった」

 「今回はIT社会からサステナブル(持続可能)な社会への移行を目指すもので、やはりいろいろな要素技術の開発に相当の準備がいる。世界が準備に入ったのが電気自動車(EV)が市販された10年頃だ。約15年の準備期間を経て25年に本格的なスタートが切られていれば、そこから世界中が一斉に動き出す。50年の実質ゼロは決して高いハードルではない」

 <蓄電デバイス耐久性がカギ>

★…サステナブル社会の姿をどのように見通していますか。続きは本紙で

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