米メルク日本法人のMSDは、新型コロナウイルス感染症治療薬で初めての飲み薬「ラゲブリオ」(一般名モルヌピラビル)について予防適応の追加を年内に承認申請する。同居人が感染した場合の濃厚接触者が予防的に服用できるようにする。日本向けにまず160万人分を供給予定だが、それ以上の供給も検討する。

 ラゲブリオは高齢者や基礎疾患などの重症化リスクがある軽症~中等症の同感染症に対する治療薬として実用化されているが、予防投与できるようにも開発する。日本も参加する国際共同治験を実施中で、年内にも結果が出る見通し。重症化リスクがない患者や無症状者、18歳未満への開発については未定という。

 同社は日本向けに160万人分の同剤を供給する契約を政府と結んでいる。治療薬としての特例承認直後の2021年末までにまず20万人分が供給され、2、3月にも20万人分ずつ提供予定。MSDのカイル・タトル社長は25日開催の説明会で、「生産能力をできるだけ引き上げ、9月までに160万人分の提供を達成したい」と話した。白沢博満上級副社長によると、「(160万人分は)絶対的な最低の供給量。それ以上に向けて、できる限りのことを国と交渉している」とした。

 同剤はコロナウイルスのRNA複製を阻害することで増殖を阻害する。白沢上級副社長によると、ウイルスの特定の酵素を標的にした作用機序ではないため、変異株に対しても効果が期待できる。非臨床の実験データでオミクロン株に対しても抗ウイルス活性が変わらないことを確認した。

 承認申請の根拠とした臨床試験の中間評価では入院・死亡リスクが48%減少する結果だったが、追加解析では30%減に縮小した。米国では同様の試験設定で90%近いリスク低減が示されたファイザーの飲み薬「パクスロビド」をラゲブリオより優先して使うことが推奨されている。説明会で講演した国際医療福祉大の松本哲哉主任教授は、「あえて先にパクスロビドを使う選択は考えない」とし、投与禁忌の対象者などが両剤で異なることなどから「メルク、ファイザーと2つの選択肢はあったほうがいい」と話した。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

セミナーイベント情報はこちら

ライフイノベーションの最新記事もっと見る