医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、新型コロナウイルスワクチンの開発に関する考え方を更新し、「プラセボ対照試験の被験者等に対する倫理的配慮」についての考え方を公表した。承認されたコロナワクチンの接種が進むと、実薬が接種されないプラセボ群を設定したコロナワクチンの臨床試験を行うのが難しくなる。PMDAは開発企業にプラセボ(偽薬)を接種される被験者に対する倫理的配慮と、有効性、安全性のエビデンスを両立できる試験計画にすることを求める。

 コロナワクチンの臨床試験の多くでは、プラセボ群を設定し、実薬かプラセボか分からない状態にする盲検化、ランダム化した試験を行う。だが承認された他のワクチンによる接種が進むほど、プラセボを接種される可能性がある臨床試験の被験者を確保するのが難しくなり、有効なワクチン接種を受けられないプラセボ群に対する倫理的な問題が生じる。そのため、PMDAは、臨床試験でプラセボ群を設定する場合などの倫理的配慮についての考え方をまとめた。

 すでに実施している臨床試験の場合、一定期間後に盲検状態を解除し、被験者がプラセボ群に入っているかを分かる対応を開発企業に求める。プラセボ群の被験者には実薬接種など有効な予防手段の情報提供も行う。治験薬が内外で承認ずみの場合は、接種機会を提供するのが望ましいとした。

 盲検解除の時期は、臨床試験のエビデンスと倫理的配慮の両方を確保できる時期を見極めて決める。具体的には、公的接種プログラムの進捗もふまえながら、医療従事者、高齢者、基礎疾患者と接種の優先順位が高い人から解除していく。

 これから始まる試験も同様の考え方が適用するが、プラセボ接種が倫理的に許容されるケースはあるとした。具体例として、(1)公的接種プログラムが開始されていない集団を対象にする(2)開発ワクチンの有効性や安全性が未確認の集団(例えば小児や妊婦など)を対象にする(3)既接種者を対象に追加免疫を目的とする追加接種を行う-ような臨床試験を挙げている。

 有効性が確認された場合は、プラセボ群も実薬に切り替えることができるクロスオーバー試験の採用も可能とした。

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