塩化ビニル樹脂(PVC)の輸出環境が一変している。世界最大輸入国のインドでは、新型コロナウイルスの感染拡大にともない3月下旬からロックダウン(都市封鎖)を開始。社会・経済活動の停滞で需要が一気に冷え込んだ。4月のインド向け輸出は3月比88・4%減の4474トンと急速に落ち込み、5年ぶりの低水準となった。台湾および韓国のインド向けは9割以上減少した。インドは不需要期のモンスーンシーズンに入りつつある。

 インドでは農業用パイプ向けを中心にPVCの内需が拡大し続けてきたが、生産能力の増強があまり行われてこなかったため、輸入は増加の一途をたどり、年間200万トンレベルに達している。日韓台が輸入元上位3位で全体の過半を占める。

 インドでは3月下旬から3週間の予定でロックダウンが始まったが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず延長された。

 こうしたなか、PVCはインド向けの輸出が打撃を受けている。財務省貿易統計によると、4月のインド向けは3月の3万8637トンから4474トンに急減した。5000トン割れは2015年1月以来。一方、ベトナム向けは3月比46・9%増の1万3820トンで、月間で初めて最大仕向け先となった。中国向けは3・8%減の7595トンで、総輸出は49・8%減の3万2689トンにとどまった。

 日本の輸出は円安などを背景に15年から拡大に転じた。インド向けが増加を牽引し、19年はインドの輸入税率の見直しで日本品がコスト面で有利となり、インド向けは年間で40万トンを突破している。

 台湾の輸出は年間130万トン規模に及び、昨年のインド向けは45万1876トンだった。今年4月はインド向けが3月比91・2%減の2135トンと一気に縮小した一方、中国向けが39・9%増の2万778トンと好調。ベトナム向けが21・1%減の1万3468トン、バングラデシュ向けが47・9%減の1万679トン、オーストラリア向けが40・5%減の1万920トンなど、全体で34・0%減の7万5180トンと振るわなかった。

 韓国の昨年のインド向けは30万5426トン。今年4月は3月比92・5%減の1416トンと急減した一方で、中国向けが18倍の1万6362トンと大幅に増加。中東やベトナム向けも増加したことから、全体で3・0%増の4万5234トンと堅調だった。

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