素材・化学分野に投資するベンチャーキャピタル(VC)のユニバーサル・マテリアルズ・インキュベーター(UMI)が官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)から独立して10月で丸5年を迎える。この間に化学大手などが出資する2つのファンドを組成し、企業の人材育成や人的なネットワークづくりの場としても機能してきた。木場祥介代表取締役パートナーは今後の成長支援策として、大企業の事業部門や子会社を外部に切り出す「カーブアウト」に力を入れると話す。

 - VCの立場から、現在の素材・化学産業をどのようにみていますか。

 「大企業、中堅企業を問わずベンチャー投資や自前主義から脱却して外部と連携するオープンイノベーションが増えている。新事業創出に対してリスクをとる姿勢が広がっていることが、良い意味で大きく変わった点だ。ただ素材・化学産業で2~3年の短期間に利益が出せる新事業はそうない。これは永遠の課題だが、収益化までの時間軸を長くみるのが本来の姿だ」

 「第3次といわれる現在のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ブームが起こったのはUMIが設立された2015年頃で、多くの企業が今まさに評価や見直しを行っている。この10年で日本も時間をお金で買うM&A(合併・買収)が一般化したが、ベンチャー投資を同じような短い時間軸で考えると厳しい評価が下され、リスクマネーの供給が細る可能性がある」

 「われわれのファンドは投資期間が約10年と長く、企業ができない時間がかけられる。第1次、第2次ブームの頃に比べてメガベンチャーや潜在力を秘めた素材・化学企業は日本に増えており、産業として成熟している証だ。中長期的に新事業が育つ事例、ロールモデルを作ることで、素材・化学分野のベンチャー投資がより活発になる。次につなげるためにこれから結果を示すフェーズであり、現在の投資先、これから投資する企業の収益化、収益拡大に力を入れる」

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