高分子材料シミュレーションシステムOCTA の解説書として2014年3月に刊行された書籍の増補版。
2016年7月にSpringer社より刊行された英訳版”Computer Simulation of Polymeric Materials. Applications of the OCTA System”では、OCTA のバージョンアップに対応した改定、内容の追加などがなされましたが、今回はさらにコラムを更新、用語集を追加し、リニューアルしました。
OCTAの概要をはじめ、シミュレーションエンジンであるCOGNAC、SUSHI、PASTA、NAPLES、MUFFIN、KAPSELの紹介、プラスチックやゴムなどのバルク材料、ブレンド、フィルム、分散剤などの材料に対し、力学的・熱的・光学性質、構造形成、拡散・透過などの多様な問題について、OCTA公開から新化学技術推進協会における技術的セミナー等を通じて集積された実用的な事例を多く収載しています。
またプログラムをインストールすることにより、分子の動き、様々なスケールの構造形成過程と物性発現機構などが実感でき、OCTAをより深く理解できます。
OCTA: Open Computational Tool for Advanced material technology
経済産業省の産学連携プロジェクトで開発された高分子材料の開発に役立つソフトウエア。高分子材料の開発においては、原子スケールの構造(官能基の種類、規則性)、分子鎖のスケールの構造(分子の重合度、分岐、架橋)、さらに鎖の配向や結晶構造、分散構造など様々なスケールの構造の制御が重要となル。OCTAはこのような多様な問題を扱うことを目指して作られた
【目 次】
第1部 高分子材料シミュレーション
第1章 高分子材料においてはシミュレーションで
どんな問題を扱うことが求められているか?
第2章 高分子シミュレーションツールの現状
2.1 電子状態レベル
2.2 原子分子レベル
2.3 メソ領域レベル
2.4 連続体レベル
2.5 原子団寄与法と物性データベース
2.6 まとめ
第3章 粗視化シミュレーションとは
3.1 高分子の粗視化
3.2 粗視化分子モデルの例
3.3 粗視化モデルと実在の高分子鎖との対応
第4章 粗視化モデルで得られる情報,失われる情報
4.1 全原子シミュレーションの適用範囲
4.2 粗視化分子モデルにより得られる情報
4.3 粗視化分子モデルにより失われる情報
第2部 高分子材料シミュレーションツールOCTA
第1章 OCTA概要
1.1 OCTA とは
1.2 UDF ファイルとPython
1.3 アクション
1.4 単位系
1.5 球や円柱などの3次元表示とSelect機能
1.6 レコードとアニメーション
1.7 おわりに
第2章 粗視化分子動力学シミュレータ COGNAC
2.1 COGNACとは
2.2 ポテンシャル関数
2.3 運動方程式
2.4 アンサンブル
2.5 境界条件
2.6 初期構造作成機能
2.7 S I L K
2.8 高分子材料開発のための拡張機能
2.9 出力情報
2.10 シミュレーション結果の解析
2.11 COGNAC利用全体の流れ
2.12 例題:高分子鎖の形と大きさ.シミュレーションによる確認
第3章 密度汎関数法シミュレータ SUSHI
3.1 SUSHIの扱う粗視化分子モデル
3.2 S C F 法
3.3 動的平均場法
3.4 現象論的な密度汎関数法
3.5 一般化RPA を用いた方法
3.6 外部電場の取り扱い
3.7 速度場を導入した動的密度汎関数法
3.8 例題:マクロ相分離/ミクロ相分離のシミュレーションによる確認
3.9 例題:相溶性の確認
3.10 例題:ジブロックコポリマーのミクロ相分離構造の計算方法
3.11 例題:ジブロックコポリマーのミクロ相分離構造の相図
第4章 レオロジーシミュレータ PASTA&NAPLES
4.1 モデルと支配方程式
4.2 モデルパラメータ
4.3 計算例1:線形粘弾性の計算と単位時間の決定
4.4 計算例2:高速せん断下での粘度成長曲線
第5章 多相構造シミュレータ MUFFIN
5.1 MUFFINの概要
5.2 理論背景
5.3 チュートリアル
5.4 Appendix
第6章 コロイド・微粒子分散系シミュレータ KAPSEL
6.1 KAPSELとは
6.2 KAPSELのインストールと基本操作
6.3 微粒子分散系のダイナミクス
6.4 荷電コロイド粒子の電気泳動
第3部 事 例 集
第1章 プラスチック材料
1.1 溶融粘弾性
1.2 高分子の結晶化
1.3 ポリマーブレンド
1.4 コンポジット
第2章 ゴム・エラストマー
2.1 架橋ゴム
2.2 熱可塑性エラストマー
2.3 フィラー充填系
第3章 薄膜,界面
3.1 表面,界面構造
3.2 表面・基板界面のガラス転移
3.3 溶媒蒸発,乾燥
3.4 長鎖分子薄膜の結晶化
3.5 オリゴマーの界面偏析を利用した粘接着特性の改質と,
その発現機構の検討
第4章 溶液(吸着・分散・会合)
4.1 イオン性高分子の吸着
4.2 吸着状態と表面力
4.3 紐状ミセル水溶液の緩和メカニズム解析
4.4 ベシクル形成
第5章 機能性膜,フィルム
5.1 電解質膜
5.2 配向複屈折
5.3 リソグラフィー
Appendix 1 OCTAを使うための高分子化学基礎
第1章 高分子鎖の形と大きさ
第2章 Flory-Huggins 理論
第3章 高分子のからみあい
Appendix 2 本書利用上の注意,OCTAおよびサンプルデータダウンロード方法
用語集
◎コラム◎
1.計算機材料設計の広い世界を探索してみよう!
2.コンピュータケミストリ分科会と夏の日の午後
3.GOURMETのススメ
4.高分子シミュレーション(OCTA) との20 年越しの出会い
5.発想の妙薬
6.高分子シミュレーションとの出会いから35 年:ひとりの結晶屋の思い出
7.プラスチックの温故知新
8.緩和計算後の分子状態確認方法
9.OCTA/COGNAC とスパコン
10.企業での分子シミュレーションのセンス
11.製品設計に役立つマルチスケールな考え方
12.OCTAとマテリアルズインフォマティクス