日本企業の東南アジア展開といえばタイやベトナム、インドネシアなどが挙げられるが、最近はフィリピンへの関心も高まってきたようだ。
 外務省の調べによると、2016年のフィリピンにおける日系企業の拠点数は10年前の2倍を超す1440拠点に増えた。投資先としての魅力はさまざまだが、一つに人的資源がある。労働集約型産業が、人件費の安い労働力を求めて東南アジアに生産拠点を移したのと同レベルでコスト面を追求するのは難しかろうが、ジェトロの調査によると基本給月額平均(米ドルベース)は、ここ数年安定している。また諸手当などを含む実質年額はベトナムとほとんど同じレベルだ。
 年齢別の人口構成で、若年層ほど人口が多いのはASEAN(東南アジア諸国連合)ではフィリピンだけだ。毎年、数十万人の新卒が労働市場に供給されている。ここ数年、GDPは6~7%の成長を続けているが、インフレ率は16年1・8%、17年3・2%(ともに旧基準06年ベース)と比較的低く、給与水準の急激な上昇を抑制しているとともに毎年、数十万人の若い労働力が入ってくることで、全体の人件費は、それほど上昇しない経済環境にあるようだ。労働者を集めやすいうえに、英語が通じるため、他の国に比べ意思の疎通がスムーズといったメリットもある。
 フィリピン政府の外資優遇制度については、輸出志向型の製造業に対する減税などの恩典を与えている。しかし近い将来の国内市場の可能性も見ていかなければならない。
 IMFの統計によるとフィリピンのGDP(米ドルベース)は15年に2920億ドルと、その10年前に比べて約3倍に拡大した。今後も順調に成長が続けば20年以降、ASEANのなかで上位に食い込む可能性がある。この成長は在外フィリピン人からの送金による旺盛な個人消費に支えられているという。ジェトロ農林水産・食品部主幹でマニラ事務所長の経験もある安藤智洋氏によると「16年の新車販売台数は初めて40万台を突破した。自動車は1300㏄の小型車の販売が伸びている。二輪車は商業目的用が多かったが、16年から個人が使うスクーターが増えているなど質的な変化が起きている」。だが最近は経済成長の牽引役として投資も増えているそうだ。
 化学産業では花王や味の素、東洋インキなどの日本企業が進出している。カントリーリスクを慎重に検討しなければいけないが、今後はフィリピンの内需を狙った進出もにらみ、同国市場を見ていく必要があろう。

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