代表取締役社長 山本 寿宣
東ソーグループは、「私たちの東ソーは、化学の革新を通して、幸せを実現し、社会に貢献する。」という企業理念の下、社会に必要とされる企業であり続けることを目指しています。長年培った技術を駆使して新しい価値を創造し、産業の発展や人々の豊かな生活に寄与していくことこそが、当社の果たすべき最大の社会的責任(CSR)だと考えています。そのための取り組みの世界標準といえる国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」や「国連グローバル・コンパクト」の10原則などを重要指針とし、より高い次元のCSR経営を目指しています。
中長期的な成長戦略として、コモディティ分野で基盤となるキャッシュ・フローと利益を確保しつつ、付加価値の高いスペシャリティ分野に継続的な開発投資を行い、新たな成長ドライバーを生み出すことで、変化に強く、安定して利益を生み出せる事業ポートフォリオを構築する「ハイブリッド経営」のさらなる深化を掲げています。そこで大きなカギを握るのが技術力・開発力です。「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」「電子材料」を重点分野と定め、研究開発テーマにSDGsを組み込むことで持続的成長を牽引する高付加価値製品の創出を目指します。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)に重きを置き、競争力の源泉である火力自家発電設備から排出されるCO2の削減を最重要課題と認識しています。これに対し、生産プロセスの省エネ化や燃料転換、排出CO2の自社での有効活用も視野に入れて取り組みを進めています。こうした問題意識から、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言へ賛同しており、気候変動による事業活動へのリスク・機会を分析し、積極的に情報を開示し、気候変動問題の解決に寄与する技術・製品の開発に注力します。
化学品の世界は、アイデアが形になるまでに10年、ビジネスとしてモノになるまでに20年といわれ、決して諦めない粘り強さと信念が求められます。私たちが「東ソースピリット」として「挑戦する意欲」や「持続する意志」を掲げる理由がそこにあります。
企業の最大の資産は「人材」です。そして持続的に価値を生み出すためには「働きがいのある企業」であることが重要です。また化学メーカーにとっては「安全」も成長の必須条件であり、トラブルの未然防止に努め、地域社会の皆さまからも信頼される「世界一安全な化学メーカー」を目指していきます。
原料のうち約6割が地球上に豊富にある資源である「塩」。塩化ビニル樹脂は、ほかの汎用樹脂プラスチック素材に比べて石油由来原料の割合が少ないことから、環境にやさしい素材といわれる。同じ用途で使われる別素材と比較して製造時のCO2排出量が低く抑えられることも特徴。水道管や農業用フィルム、壁紙・床材など世界各地で人びとの生活を支えるインフラ・建材として、優れた断熱性能を発揮する樹脂窓では省エネに貢献する素材として広く使われている。
インフラ材料の代表であるセメントでは、社内外から廃棄物を受け入れ、セメント原料として有効利用している。
廃棄物は各種工場から出る汚泥や石炭灰をはじめ、廃家電や廃プラなど幅広く利用し、さらに焼成用の熱エネルギーとして有効活用することで燃料の節約も実現。燃えがらは原料に再利用することで二次廃棄物を発生させない。まさにセメントプラントは私たちの暮らしを支えるだけでなく、「資源リサイクル工場」としての役割も担っている。
優れた吸着性能や耐熱性を有する特性を生かして、自動車排ガスの無公害化を果たす重要な役割を担っているハイシリカゼオライト。特にディーゼルエンジンの排ガス浄化触媒として世界中で使用されている。欧米をはじめ中国やインドなど各国で、大気汚染を引き起こす窒素酸化物(NOx)などの排出規制が年々厳しくなっている中、数少ない供給メーカーとして地球環境を守るという大きな使命を担っている。
小さな泡の集合体で、断熱性能に優れた素材として住宅や家電など身の回りで活躍しているウレタン。建築分野では住宅の壁などに使用され室内を保温し冷暖房効率の改善に力を発揮、冷蔵庫ではぐるりと囲むように使用され庫内温度を保ち消費電力を節約するなど、人びとの暮らしの中で省エネルギーに貢献している。ウレタン原料であるイソシアネートの製造にCO2を有効利用する研究開発にも取り組んでいる。
重金属処理剤は、工業排水やゴミ焼却灰に含まれる有害な重金属(亜鉛、銅、水銀、ニッケル、カドミウム、鉛など)を不溶化し、自然環境に流出しないようにする。環境規制強化に伴う重金属処理ニーズの高まりに対応して高い処理性能を実現するだけでなく、作業者の安全性にも配慮し、人と環境にやさしい製品を提供し続けている。近年、海外でも環境規制が強化されていて重金属処理剤の必要性が増している。
感染症対策につながる遺伝子検査に使用する検査試薬と検査装置を提供する。新型コロナウイルス流行を受け迅速な開発に取り組み、2020年夏に販売を開始。ウイルスを高感度かつ簡単な操作で、約40分で検出することが可能で、検査作業の効率化、検査従事者の作業負担を大幅に軽減でき、感染拡大防止や検査体制の拡充にもつながっている。さらに新型コロナウイルス抗体検出試薬を提供するなど、人びとの健康を守るとともに医療体制の強化に貢献している。
プラスチックごみ問題を背景にリサイクルの重要性が増すなか、複数の素材が使われた多層フィルムなどの複合プラスチックのリサイクルが課題となっている。
異素材が混在するプラスチックのマテリアルリサイクルは難しいが、開発されたリサイクル助剤を使用することで再生材の性能低下という課題を解決することが可能。将来的には消費財メーカーやリサイクル企業などとの連携によるリサイクルシステムの構築を視野に事業化を進めていく。
塩化ビニル樹脂などの原料となる塩素と、工場での生産活動で幅広く利用されるカ性ソーダは、塩水を電気分解する電解槽という装置から一緒に生産される。電解槽は電力多消費のため省エネに優れた電解槽の開発が非常に重要。パートナー企業と最先端の新型電解槽を共同開発。開発した高性能の電解槽はすでに世界36カ国の企業に採用され、導入企業先での省エネルギーをCO2排出削減量で算出すると年間で約900万トンに上り、プラント技術においても環境負荷の低減に貢献している。