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¥90,000(税別)

在庫有り

著者
調査・執筆:菅原 秀一
出版社
株式会社シーエムシー・リサーチ
発行日
2019年9月10日
サイズ
A4判・並製・267頁(カラー印刷)
ISBN
978-4-904482-65-0

本書の概要

[刊行にあたって]

 本書は2019年1月に刊行した「EVワールド(米・中・韓・欧・日)総覧」の改定版である。左記の内容は、概ね2018年後半までの諸データを基礎にした。それから現在まで、EVに関する状況の変化はめまぐるしいものがある。本書は可能な限り、新しい数値データを元に、試算と解析を進めるとのスタンスであり、「EVワールドⅡ」として改定を行った。改定では、元素資源、正・負極材と電池生産のマッチングにポイントを置き、EVと電池生産それ自体や、大量の廃電池のリサイクル等の問題は、後に刊行予定の「EVワールドⅢ」に分割した。
 全世界のEV等の生産は、2018年実績で200万台を越えた。その中で車種の多様化、電池容量kWhの大型化と小型化が同時に進行している。ほんの2~3年前の、単純生産拡大と大型化のトレンドとは決別して、自動車としての本来の姿を目指しているようにも見える。その中で需要の約半分を占める中国市場は、相変わらず世界の動向を左右している。
 EV生産の政策目標と実績の乖離は、中国に限らず欧米にも多く見られる。この背景には原材料である正・負極材の元素資源(Co、Li等)の制約と電池コストへの懸念や、資源獲得競争の激化がある。ここ数年の世界的なEVシフト自体も、行く先の制約条件を見ないで進行した様相があり、目標に元素資源の使用可能量や、資源リサイクルの量などの整合性が求められる。
 本書の仮定ではEVが2030年で1000万台レベルにならないと、設備産業である化学原料の供給は安定しない。電池の市場規模が、EVだけで10~20兆円となることが一つの目処であろう。しかしながら現状はEVの発火事故の再発や充電インフラの不備で、足止めをされている状況である。この段階での電池総量GWhの試算を行い、そのマグニチュードを示した。
 本書後半で扱った正・負極材と元素資源の所要量の推算は、自動車や電池の業界ではあまり関心がなく、情報も整理されていないように思われる。本書では主題を解析して行く中で、敢えて化学量論的な内容にも踏み込んだが、定量的な出入“マッチング”を無視しては産業は成り立たない。そのため単位や大きな数字の扱いなど、難解な内容も一部含まれているがご容赦願いたい。
 本書は化学と元素資源に寄った内容になっているが、異業種が連なるEVにおいては、むしろ出口側の自動車産業の方にも、入り口側の情報を参考にして頂ければ幸いである。(2019年9月)
               調査・執筆:菅原秀一/企画・編集:シーエムシー・リサーチ

[目  次]

第1章 EV生産台数の実績と推移
 この章では2018年までの実績と、2030年を一つの区切りとした台数の推定と解析を行った。数年前の計画から大幅に乖離している中国や米国などの地域がある一方で、北欧での大幅な実績増加等が見られる。自動車メーカー別においても、車種の入れ替わりが激しく、PHVの構成比率が高まるなどの変化も見られる。
 IEA(国際エネルギー機関)や関連業界が、2030年レベルのEV比率を予測しているが、結果は桁違いに異なっている。IEAの台数設定は大気汚染の解決の観点から、かなり大幅なEV の増加を求めている。
 1.1 2030年までの予測、銀行、IEAほか
 1.2 世界の生産、~2018年実績2030年予測
 1.3 中国の生産、~2018年実績2030年予測
 1.4 国別、自動車メーカー別の生産実績

第2章 搭載電池のkWh容量と総量GWh
 車種別の搭載電池のkWh値を積算して、電池GWh/EV1万台を算出する。最終的には2030 年段階での、電池総量GWhを推定して行くことになるが、kWh値は意外と低い値に収斂を見せており、これまでとはトレンドが変わったとも見える。走行km数との関係では,電池容量のみならず、EVのメカトロ効率が大きく関係するので、最近の車種のデータを紹介する。
 2.1 電池容量のメーカー別、車種別実績と推定(~2018、2030)
 2.2 EV、PHV搭載電池のkWhの推移
 2.3 走行距離kmと電池容量kWhのバランス
 2.4 電池総量GWhと市場規模

第3章 正極材の特性と元素資源の所要量
 EVの正極材はいずれが主流となるか、現時点ではNMC622三元系が、コスト・パフォーマンスの点で優位であろう。これもCoのコスト問題との妥協であり、非Coの単元系もかなりのポテンシャルがある。仮にEV1,000万台/年電池max800GWhで、必要なCo,Liほかが賄えるかが要点である。
 3.1 単元系正極材と特性
 3.2 多元系正極材と特性
 3.3 正極材とNi、Coの所要量と前駆体
 3.4 EV生産台数と元素資源の所要量
 3.5 正極材の参入企業と増産計画

第4章 負極材の特性と元素資源の所要量
 負極材は正極材に比べると、kWh容量では脇役的な存在ではある。一方で電池のサイクル、パワーと回生においては負極材の特性が大きく影響する。ここでは炭素・黒鉛系負極材の欠点、特に嵩高い電極層による比容量Wh/Lの低下と、これを改良することも含めて、シリコン系など髙容量負極材の特性を紹介する。
 リチウム元素資源は正負極と電解質に共通するのでここでまとめて扱う。
 4.1 炭素・黒鉛系負極材の特性と比容量
 4.2 シリコン系と合金系の負極材の特性と実用性
 4.3 新規負極材TiO2、WO5、Nb他の特性とメリット
 4.4 正負極と電解質のリチウム資源とリサイクル
   (リチウムに付いては正極分も含めてここで扱う)
 4.5 負極材への参入企業と増設計画2019

第5章 電池GWhあたりの元素所要量
 第2章~4章の元素資源の所要量などの係数は、下記の方法で、いくつかの仮定を置いて算定しているので、その詳細を示した。また非常に大きな単位の数字を扱うので、単位の換算なども念の為に一覧した。
 5.1 EVにおける正極材の選定と計算の過程
 5.2 電池(セル)の材料、部材の構成(重量、体積)
 5.3 単位の換算と表示方法(k、M、G、W、Wh、Ah)

第6章 まとめと展望
 本書(EVワールドⅡ)は本シリーズの最も始めの“原材料と正・負極材”の部分だけである。実際には下記の諸問題がクリアされて、大きな市場が見えないと、鉱業と化学工業からの供給体制は整わない。異業種の連系で、リチウムイオン電池とEVは、思いのほか動きが遅い。
 更にはEVシステムの安全性の確保は言うまでもないが、大量の廃電池の処置が出来なければ、EVは10年足らずで行き詰まることになる。
 下記の6.2、6.3節は、後続のEVワールドシリーズの主題として詳しく扱って行く予定であるが、ここでは要点だけを説明したい。
 6.1 xEVの価値(環境、エネルギーほか)
 6.2 電池市場規模と原材料供給
 6.3 諸問題との整合性(1)(廃電池とリサイクル)
 6.4 諸問題との整合性(2)(安全性)

第7章 参考資料
 下記の事項は、本書の自動車市場的、技術的な背景である。先の各章で扱うと煩雑になるので、多少の教科書的な内容も含めて、参考資料としてまとめた。
 R.1 xEVにおけるCAFE規制等の概要
 R.2 正極材の合成と原料、リサイクル
 R.3 電池のパワー、エネルギーと比容量
 R.4 世界の元素資源の開発状況