オーストリアの自動車産業は、北部国境を自動車大国・ドイツと、南側をイタリアと接するほか、EU域内の組み立て拠点として成長するチェコやハンガリーなどとの国境を持つことから、研究開発および部品製造を軸に発展してきた。現在、その核となるクラスターはウィーン、シュタイアー、アッパーオーストリアの3カ所あり、国内全体で700社・17万5000人が自動車産業に従事する。
 今年に入りハンガリーでメルセデスベンツの新工場が稼働を開始。4月にはセルビアでフィアットの新工場が立ち上がるなど、この地域における自動車生産は今なお拡大基調で推移している。オーストリアで製造される部品の50%が独ブランド向けに供給されており、BMWでは同社生産量の3分の2に当たる年間70万基以上のエンジンを生産するほか、ディーゼルエンジンおよび3気筒の小型エンジンの開発拠点を置いている。
 このように世界的にも優れた競争力を有する大手企業が産業基盤を形成しているのが同国の強み。GMグループ最大のパワートレイン工場であるオペル・ウィーン(旧GMパワートレイン)ではエンジン60万台およびトランスミッション95万台を生産(2011年実績)し、EU域内をはじめ韓国、中国といったアジア圏やブラジルなどに供給している。今年6月から韓国へは欧州への逆輸入車向けトランスミッションの輸出を開始したほか、夏から中国専用エンジンの生産が加わるため、EU域外への供給量は08年の7%から30%に拡大する。
 競争力の源泉は生産性の高さと電力料金などのユーティリティーコストの安さ。生産性に関してはトランスミッションで組み立て工程の8割を自動化する一方、昨年は改善活動により1人当たり1600ユーロ(従業員数1600人強)のコスト削減を実施した。今後も日本から調達している鍛造部材の現地調達化などに取り組んでいくことで、さらなる競争力強化を図る考えだ。
 世界第4位の部品メーカー、マグナ・インターナショナルの子会社であるマグナ・シュタイアーは、グループで唯一、デザイン・設計から完成車の組み立てまでを手掛ける一貫生産拠点。完成車はセダンおよびSUVが組み立て可能な多車種対応ラインをベースに年間24万台体制を構築。現在はベンツやプジョーなど4ブランドで年13万台の組み立てを行っており、14年から日産インフィニティが加わる。受注から生産開始までの期間短縮を進めており、すでに以前の36カ月から24カ月へ短縮化を図ったが、1年後にはこれを22カ月まで短縮する計画。
 また、自動車製造のワン・ストップ・ショップを標榜する同社では、独自工法や軽量部材の開発など技術革新を積極的に推進中。産業クラスターを活用してこれまでに溶接技術の高度化などを外部企業と共同で行ったほか、現在も衝撃吸収部材向けにスチール繊維強化の熱可塑性樹脂の開発を進めている。

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