世界的な燃費規制の強化を背景に新車開発における車体軽量化の取り組みが加速している。低燃費化の有効手段として実用化が進むハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)においても航続距離(電費性能)の観点から軽量化の重要性は変わらない。本連載では素材を切り口にポリプロピレン(PP)、マグネシウム、鋼材(ハイテン)、CFRP、樹脂グレージングについて取り組みの現状を紹介する。
 汎用樹脂のPPは安価かつ物性バランスや成形加工性に優れており、バンパーやトリムといった部品を軸に自動車の樹脂部品における使用比率が4割超を占める主要材料。ベースのPPにゴムおよび充填材(タルク)を配合する3成分の材料設計が一般的であり、その配合比率によって必要とする物性を確保してきた。近年では、さらなる高性能化および適用部位拡大に向けた材料設計まで踏み込んだ開発が活発化している。
 マツダがバンパー用に開発したPPは、PPおよびゴムともに高分子量と低分子量の2種類を用いた5成分系材料。部材内部に配した高分子量PPにより剛性を確保する一方、低下した成形性を低分子量PPの添加により補うことで剛性と成形性という相反する特性を両立している。また、剛性向上を目的としたタルク増量による耐衝撃性の低下には高分子量ゴムの添加で対応するとともに、低分子量ゴムを表層に析出するよう添加することで塗装密着性を確保。これら多成分制御による機能配分により、従来材に対して曲げ弾性率で50%、流動性で25%向上しており、部材の薄肉化による約20%の軽量化(フロントおよびリアバンパーに採用した場合)と成形時間の半減(約60秒 →30秒)を実現した。
 一方、スズキのSSPP(スズキ スーパーポリプロピレン)は、ベースのPPを自動車用途で一般的な耐衝撃性に優れたブロックPPから硬くて脆いホモPPに置き換え、ゴム成分に水添スチレン系エラストマー(SEBS)を採用した2成分系材料。バンパーやトリムに適用可能な機械的物性を有しており、従来のタルク添加量に相当する軽量化を可能とする。タルクフリーにより透明性を向上したことで従来の3成分系PPでは不可能な材料着色化を実現しており、高輝度シルバーメタリック色の無塗装化も可能だ。
 日産自動車でも材料設計(配合技術)に着目した開発を行っており、スズキではコンパウンド装置や射出成形機といった設備・機器の導入により独自の開発体制を構築するなど取り組みを強化。SSPPに関しては新たにスチレン量の異なる2種類のSEBSを併用することで、従来材比4倍の耐傷付き性を実現するなど用途拡大に向けた高性能化に取り組んでいる。
 自動車メーカーが材料開発の高度化を進めるなか、素材各社もユーザーの開発支援を行う一方でベースポリマーのさらなる性能向上を推進中。これまでも高流動化、高結晶化による剛性向上や重合ゴム成分の制御による耐衝撃性向上などが図られてきたが、今後は「流動性のさらなる向上を推進する」(プライムポリマー)など基本物性の改良とともに、従来のゴムやタルクに続く「第3素材とのバランスを考慮した開発」(日本ポリプロ)など材料設計の高度化への対応を強化している。
 大成プラスと三井化学が金属との接合技術を確立したほか、アキレスでは従来のエッチングメッキとは異なる独自の無電解メッキ技術の事業化を進めるなど、応用技術の開発も進んでいる。EVでは温度環境の低下などから材料に対する要求特性の緩和も予想され、PPの技術開発で最先端をいくわが国にとって今後の適用拡大が大きな競争力となりそうだ。

自動車関連ニュースの最新記事もっと見る