比重がアルミニウムの3分の2であるマグネシウム(Mg)。自動車など輸送機器の軽量・低燃費化ニーズを背景に、中国や韓国などが戦略材料と位置付け研究開発を活発化させている。国内でも10を超える研究プロジェクトが進行中であり、成形性や高強度化といった機械的特性の改善が図られている。また、課題である易燃性もカルシウム(Ca)添加による難燃化技術が進展しており、軽量素材として実用化の動向が注目される。
 近年、開発が進んでいるのが高強度合金。熊本大学の河村能人教授は、遷移金属および希土類金属の添加により引っ張り強度425メガパスカル(250度Cで同280メガパスカル)を有する合金を開発。また川本重工でも、降温多軸鍛造(MDF)法により超々ジュラルミンを凌ぐ高強度Mg合金の量産化を進めている。
 三協マテリアルも独自の断熱鋳型連続鋳造法により、鍛造用途の市場開拓を推進中。Mgは鍛造による結晶粒径の微細化により強度が向上するが、製法上の制約から一般には普及していない。同社では耐火材で周囲を覆った鋳型を使用し、急速冷却により溶湯を固化することで結晶粒径を従来の200マイクロメートル以下から最小50マイクロメートルへと4分の1に微細化。また、155ミリが限界だったビレット直径を50?100ミリの範囲で制御可能とし、従来製法で不可欠な押出工程の省略による低コスト化を実現した。Ca添加による難燃合金の量産化も可能であり、部品メーカーと共同で14?16年モデルでの採用に向け製品開発に取り組んでいる。
 また、板材では海外においてボンネットやルーフなどの開発が進んでいる。国内でも日本金属が700ミリメートル幅の板材の製造技術を確立するとともに、独自の組織制御技術により合金元素を添加せずに汎用プレス機を用いた常温でのプレス成形が可能な板材を開発ずみ。同技術は板材に対して連続的に曲げ変形を与えることを基本としており、ほとんどのMg合金に対して適用できる。板材でもCaの均一分散化技術の進展により難燃化も進んでおり、プレス成形によるMg部品の実用化が期待される。
 材料コストの高さが指摘されるMgだが、板材では「月100トン規模になれば現在の押出から圧延への製法転換により低コスト化が可能」(日本金属)。鍛造品でも量産効果によるコスト低減とともに、軽量化により「部品1個当たりでは言われるほど高くない」(三協マテリアル)。いかに市場規模を拡大するかが普及のカギだが、そのベースとなるのが設計および加工技術。鍛造品の場合、合金が異方性を持つため、それを考慮した製品設計が不可欠。また、板材も常温プレス可能な材料が開発されているとはいえ、温間プレスが主流であり、そのための技術ノウハウが必要だ。
 現在、主流となっているダイカストや射出成形(チクソモールディング)を含む鋳造品でも、用途拡大に向けた取り組みが進んでいる。成形温度が高いものの製法および装置が基本的に樹脂と同じチクソモールディングでは、射出成形メーカーのネクサス(熊本県)がダイカスト品に比べて製品表面近傍の結晶粒が微細で機械的特性や耐食性に優れる点や薄肉化、一体成形技術を活用した展開を推進中。インサート成形による樹脂との複合化では、剛性向上や表面処理工程の削減による低コスト化を実現しており、製品の大型化など用途拡大に向けた技術開発に取り組んでいる。
 実用金属の中で最軽量のマグネシウムは、材料および要素技術の開発加速を背景に、アルミやエンプラの代替素材として台頭してくることが予想される。

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